Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
体表臓器:体表臓器

(S488)

早期関節リウマチにおける関節エコー,MRI検査所見と有用性について

Usefulness of musculoskeletal ultrasonogaphy and MRI in early Rheumatoid Arthritis

高橋 亜希1, 木下 静江1, 松浦 宏樹1, 竹林 真弓1, 浄土 智2

Aki TAKAHASHI1, Shizue KINOSHITA1, Hiroki MATSUURA1, Mayumi TAKEBAYASHI1, Satoshi JOUDO2

1苫小牧市立病院臨床検査科, 2苫小牧市立病院内科

1Department of Clinical Laboratory, Tomakomai City Hospital, 2Department of Internal Medicine, Tomakomai City Hospital

キーワード :

【目的】
関節リウマチの早期診断における関節エコーと造影MRI検査の特徴と有用性について検討する.
【対象と方法】
2010年5月から2011年11月までに当院に初診で受診し有症状期間1年未満の関節痛または関節の腫脹を認め,関節エコー,造影MRI,血液検査(CRP,ESR,RF,抗CCP抗体,MMP-3)を施行した42例(男性13例,女性29例,平均年齢59.7歳)を対象とした.造影MRI検査は左右いずれかの手指と手関節,膝関節,足趾と足関節のうち最も症状の強い部位を撮影し,関節エコー検査も同じ部位で検討を行った.関節エコーはパワードプラにて関節腔内にドプラシグナルを認めないものをGrade0,点状シグナルが見られるものをGrade1,線状シグナルを認め関節腔内の1/2未満のものをGrade2,1/2以上のものをGrade3とし各関節で最も高いGradeを採用した.1)総合的に早期関節リウマチ(以下早期RA)と診断された26例と関節リウマチではない(以下非RA)と診断された16例のエコーとMRI所見の一致率,2)血液検査においてRF,抗CCP抗体がともに陰性であった早期RAにおいてエコーとMRI所見の比較,3)エコーGradeとCRP,ESR,MMP-3の関係を検討した.
【結果】
1)早期RAの全症例がエコーあるいはMRIのいずれかの画像所見が陽性であった.エコーでGrade1〜3のドプラシグナルが見られMRIでも滑膜炎を認めたものは21例で一致率は80.8%,エコーのみドプラシグナルを認めたものは3例,MRIのみ滑膜炎を認めたものは2例であった.エコーでドプラシグナルを認めなかったものについてはMRIを撮影していない他部位の関節でGrade1のシグナルを指摘できていた.非RAではエコー,MRIとも所見陽性であったものが4例(25.0%)見られ,MRIのみ所見があったもの2例,エコーのみ所見が見られたものはなかった.早期RAのエコーGradeは1が7例(27%),2が8例(31%),3が11例(42%),非RAでドプラシグナルを認めたものはGrade1が3例,Grade2が1例であった.2)早期RAにおいてRF,抗CCP抗体がともに陰性であったものは11例(42.3%)であった.エコーではドプラシグナルを全症例に認め,このうちMRIで滑膜炎を指摘できないものが2例あった.3)早期RAのエコーGradeを1と2,3の群に分けてCRP,ESR,MMP-3とそれぞれt検定を行ったがドプラシグナルとの間に有意差は見られなかった.
【考察】
早期RAにおいて関節エコーはMRIで造影効果を認めなかった症例や血清所見陰性RAにも全症例ドプラシグナルが認められ滑膜の血管増生を鋭敏に捉えていた.エコーGradeの高低とCRP,ESR,MMP-3の間に有意差は見られなかったが,早期RA患者が今後治療をしていく上でエコーGradeによる半定量評価をしておくことは必要と思われる.非RAにおいてもエコーでドプラシグナルを認めたりMRIで造影効果を認めた症例もあり経過を見ていく必要があると思われた.早期RAではMRIでのみ捉えられる骨髄浮腫,骨浸食所見が存在することがあり,簡便で一度に複数の関節を検査できるエコー検査とともに両者を用いることが診断に有用であると思われた.