Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
腎泌尿器:腎泌尿器2

(S486)

腹圧性尿失禁症例の傍尿道周囲 脂肪組織由来幹細胞注入部微小循環血流イメージング

Microcirculation imaging of periurethral injection of adiposed tissue drived stem cells by transrectal enhanced echograhy

山本 徳則, 服部 良平, 後藤 百万

Tokunori YAMAMOTO, Ryouhei HATTORI, Momokazu GOTOH

名古屋大学泌尿器科

Department of Urology, Nagoya University

キーワード :

【目的】
我々の教室は脂肪由来幹細胞をソースとした泌尿器科疾患に対する新規治療(特願2006-216234, PCT/JP2007/065431)(特願2009-232068, PCT/JP2010/65271)についての基礎研究を行いその成果を前学会のシンポジウムで報告した.臨床研究については今年3月にヒト幹細胞指針に認可を得て腹圧性尿失禁対して臨床治療を行っている.以前,この再生治療のメカニズムの一つとして下部尿路再生における微小循環環境重要性を報告している(Tissue Eng 2009).今回は,腹圧性尿失禁治療に対するASC治療時の局所微小循環の評価と重要性について考察した.
【方法】
研究1)前立腺癌術後尿失禁が1年以上継続する群(n=6)と改善する群(n=6)において造影TRUSを用いて膜様部における局所血流を評価した.研究2)尿失禁が継続する群に対して,脂肪吸引200gから脂肪組織由来幹細胞(ASC)を抽出し(1X106-8個),内視鏡下に傍尿道周囲に自己脂肪と混和(10ml)して注入した.造影MRI検査とMRIと同期した経直腸的造影超音波を行い局所微小循環血流を評価した.研究3)注入したASCの細胞特性とサイトカイン分泌を評価した.
【結果】
研究1)尿失禁の継続する群は改善する群と比較して有意に膜様部血流が低下し,虚血が生じていることを示唆した.研究2)TRUSにおいてASC注入2日から局所微小循環血流は増加し,4日目に血管新生所見を認め3ヶ月以上継続し,骨盤血流増加へ波及していった.造影MRIでは造影TRUSに一致してASC注入部に血流増加を認めた研究3)注入した細胞の表面マーカはCD29 と44陽性であった.また血流と関連の深いVEGFと抗線維化作用を有するHGF は低栄養状態(低血清培養)で亢進し,VEGFは低酸素状態でさらに増強された.
【結語】
前立腺癌術後の難治性腹圧性尿失禁症例の膜様部では局所微小循環が低下し,手術による虚血が関与されていることが示唆された.その虚血状態を傍尿道周囲ASC注入療法によって改善し,膜様部から骨盤血流への改善へと波及せしまた.その機序としてASC注入部位で分泌されるサイトカインによる局所血管新生,血流そして抗線維化作用によっものが関与する可能性を示唆した.