Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
腎泌尿器:腎泌尿器2

(S486)

ウエアラブル空中超音波ドプラシステムによる無拘束ウロダイナミクス計測

Unconstrained Urodynamics Measurement by Wearable Airborne Ultrasound Doppler System

松本 成史, 柿崎 秀宏

Seiji MATSUMOTO, Hidehiro KAKIZAKI

旭川医科大学腎泌尿器外科

Dept. of Renal and Urologic Surgery, Asahikawa Medical University

キーワード :

【研究の背景】
ウロダイナミクス (Urodynamics) 計測においては,蓄尿や排尿反射,また排尿時の尿流の瞬時速度,瞬時流量,それらの時系列パターン記録,さらに総尿排出量などが観測項目となる.従来は尿を受ける容器に応力,重量,等のセンサをつけたかなり即物的原始的な計測が行われ,装置は“トイレのような物”に各種センサを配備した物となり,また実際にもこれは実用される尿器や便器にかかるセンサシステムを追加装備する形で実装されているので,患者はそのような“計測トイレ”まで出掛けて計測される必要があった.
【課題と解決方法】
そこで本研究においてはこのようなトイレの側にセンサ一式を装備するという思想を廃し,排尿を行う人体の側に装備され得る,または独立しても動作可能なウロダイナミクス計測システムとして周波数40KHzの空中超音波CWドプラシステムを援用し,一定の好ましい見通しを得たので報告する.
【結果と考察】
試作プロトタイプシステムは人指し指に嵌めるセンサ(送受波器)を有し,該センサには単一振動子式のCWドプラ送受信が結合されている.センサと送受信機は試作品ではケーブル接続であるが,既に手のひらに収まる名刺大の小型軽量であり,容易に身体に装着出来るウエアラブルデバイスとして実現出来る物である.センサの視野とする空中を走行する尿流からのドプラシフトを有する反射波は復調の後周波数スペクトラム分析される.これによって超音波ビームパターンの重みづけ補正やドプラ見込み角の補正は捨象しつつも,信号パワー関数により瞬時尿流量の,および時系列ドプラスペクトラムにより尿流速時系列の,相対化されたパターンが明確に観測された.また図示の如く該時系列ドプラスペクトラムの頂点の軌跡は従来手法のメスカップ式の装置による尿流曲線と定性的に非常に良く合致する事が証明された.
【結論】
本法ないし本技術は患者の体(指もしくは手の甲)に装着する患者自身の自律管理による無拘束下での自然な排尿動態を日常的に計測出来る可能性を開く物であり,適切な校正が伴えば従来概念のウロダイナミクス計測を大きく変革するものである可能性が強く示唆された.今後の課題には実患者での計測の試行の積み上げおよび定量計測への校正手段などが含まれる.