Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
腎泌尿器:腎泌尿器2

(S485)

直腸診併用による経腹超音波ガイド下尿道カテーテル挿入法の有用性

Utility of transabdominal ultrasound-guided urethral catheterization with digital rectal examination

亀田 徹1, 村田 靖2, 藤田 正人1, 伊坂 晃1, 路 昭遠1, 小澤 正敬1

Toru KAMEDA1, Yasushi MURATA2, Masato FUJITA1, Akira ISAKA1, Zhaoyuan LU1, Masataka OZAWA1

1安曇野赤十字病院救急部, 2安曇野赤十字病院泌尿器科

1Department of Emergency Medicine, Red Cross Azumino Hospital, 2Department of Urology, Red Cross Azumino Hospital

キーワード :

【目的】
尿道カテーテル挿入が困難な例を対象に,泌尿器科医以外の医師でも安全に施行可能な,直腸診併用による経腹超音波ガイド下尿道カテーテル挿入法を考案し,少数例ながらその有用性を検討した.
【対象と方法】
救急外来で看護師もしくは担当医が通常の方法で尿道カテーテル挿入を試みたが挿入できない男性患者,もしくは他施設で挿入ができず,その操作により尿道から出血を起こし,挿入を目的に救急外来を受診した男性患者を対象とした.泌尿器科手術の既往のある患者は除外した.超音波装置はSonoSite Micromaxx,プローブはコンベックス型2-5 MHzを使用した.尿道カテーテルは救急外来で当初使用したものをそのまま利用した.救急医はプローブを恥骨上腹壁に置き,縦断走査で膀胱を介して可能な限り前立腺部から球部尿道付近を観察し,看護師は従来法でつかえる部位まで尿道カテーテルを挿入し,超音波検査によるカテーテルの先端部の同定を試みた.先端部の同定を容易にするために,必要に応じカテーテルの出し入れ操作により先端部を少し動かした.カテーテル先端部が同定された場合,カテーテルを少し引き抜いた状態で超音波走査を担当している救急医がもう一方の手指で直腸診を行い,カテーテルがつかえた部位を腹側へ圧迫,その上で看護師は再度カテーテルを進め,尿道カテーテルの挿入が円滑に行えるかを検討した.
【結果】
対象は4例で,年齢は56歳から93歳であった.3例には前立腺肥大の既往があり,いずれも尿道カテーテル挿入困難で当院泌尿器科医の介入が行われたことがあり,今回他施設で尿道カテーテルが挿入できず,挿入を目的に当院へ転院搬送となった.他の1例は脳幹梗塞後寝たきりで尿道カテーテル留置歴があり,難治性肺炎の加療を目的に当院へ転院搬送となった.全例経腹超音波検査で前立腺部から球部尿道の間にカテーテル先端部が確認された.1例には14Frネラトンカテーテルが挿入されたが,球部尿道の6時方向に形成された偽尿道に先端部が迷入した.1例には16Frチーマンカテーテルが挿入されたが,膜様部から球部尿道付近が6時方向に拡張し,拡張部に先端がつかえていた.残り2例には14Frフォーリー,16Frチーマンカテーテルそれぞれが挿入されたが,尿道の湾曲が強い部位に先端がつかえているように見受けられたが,偽尿道の関与は不明であった.いずれの症例も直腸診による腹側への圧迫操作により,偽尿道が押しつぶされたり,尿道の湾曲がゆるやかになる様子が超音波検査でされ,その後の挿入操作でカテーテル先端部が膀胱内へ円滑に進められた.
【考察】
少数例での検討だが,経腹超音波検査でも前立腺部から球部尿道付近でつかえたカテーテルの先端部が観察され,挿入困難の要因をある程度認識することができた.また超音波検査をガイドに,直腸診でカテーテルがつかえた部位を腹側へ圧迫すれば,カテーテルの挿入が容易になる例が存在することがわかった.
【結語】
直腸診併用による経腹超音波ガイド下尿道カテーテル挿入法は,一部の挿入困難例に対しては有用であり,泌尿器科医以外の診察医でも安全に行える手技と考えられたが,確証を得るにはさらに症例を積み重ねての検討が必要である.