寺澤 良夫¹, 広田 むつ子², 須藤 誠二², 野村 禎子², 野村 幸宏², 鈴木 とよみ², 五十嵐 やよい²

Yoshio TERASAWA¹, Mutsuko HIROTA², Seiji SUDO², Yoshiko NOMURA², Yukihiro NOMURA², Toyomi SUZUKI², Yayoi IGARASHI²

¹仙台社会保険病院内科, ²仙台社会保険病院超音波検査室

¹Internal medicine, Sendai Shakaihoken Hospital, ²Ultrasonic Laboratory, Sendai Shakaihoken Hospital

キーワード :

【目的】
当院で経験した両腎腫瘍摘出症例の疾患名,診断,転移の可能性および予後について検討した^1）．
【対象】
1984年4月〜2011年10月までの当院腎腫瘍手術例は1242人でこのうち腎癌（RCC）は1190人（96％）であった．両腎摘出例は75人（6％）で（146RCC,1人2multiple myeloma,1人甲状腺癌の転移）このうち血液透析症例（HD）49人（98RCC）を除く26人を対象とした．
【結果】
1．1腎目他院,2腎目当院手術例：6人5人：RCC（10RCC）,1人（両腎）：甲状腺癌の転移,2人：転移死亡2．2腎共に当院手術例（20人）1．RCC:19人,1人：multiple myeloma2．1腎目摘出腫瘍径　2cm:2人,2＜〜≦5cm:10人,5cm＜：8人3．1腎目RCC術後2腎摘までの期間≦1Y：5人（5人共1腎目手術時に左右腎癌）,1Y1M：1人,2＜〜≦4Y：4人,4Y＜〜≦8Y：5人,10＜〜≦18Y：4人,22Y6M：1人4．部分切除（12人）両腎部切：2人（4RCC）,1腎目部切：3人（3RCC）,2腎目部切：7人（6RCC,1multiple myeloma）5．腎摘後血液透析（HD）：7人1腎摘後：1人,2腎摘後；6人6．予後 生存：14人,死亡：6人（5人：転移死,1人：死因不明,自宅死）7．1腎目手術から死亡までの期間（6人）8M（死因不明）,7Y3M,17Y5M,5Y5M,7Y7M,8Y7M8．組織所見13人：2腎共,clear cell carc. 4人：1腎,clear cell carc. 1腎,clear cell carc.＋granular cell carc. 1人：2腎共,papillary cell carc. 1人：2腎共,spindle cell carc. 1人：2腎共,multiple myeloma 9．他臓器への転移：6人,2腎目多発：3人（うち1人：他臓器への転移あり）
【考察】
当院で両側腎腫瘍手術例75人（6％）を経験し,以下の所見を得た．1．両腎摘出例75人（146RCC,1人：2 multiple myeloma, 1人：甲状腺癌の転移）．このうち血液透析例49人（98RCC）を除く26人を対象とした（両腎当院手術例：20人,6人：1腎目他院手術,2腎目当院手術）．2．両腎当院手術例（20人）1）1腎目摘出腫瘍径3cm＜：15人で大きなRCCが多く,対側腎の転移の可能性は否定できない．2）2腎目RCC手術までの期間4Y＜：10人,最長22Y6Mで,初回RCC術後20年間は1年に1回のUSでのfollowが必要．また5人が1年以内に両腎癌を手術したが（初回に両腎癌の検出例）,転移,左右原発RCCかの判定困難^2） 3）予後6人死亡（5人：転移死,1人：死因不明）,検診US等で更に小腎癌の検出が必要．4）2腎目転移の可能性（8人）組織型も左右同一で,初回時両腎癌（5人）例でも,RCCが大きく転移例との判定は難しい^2）．他臓器への転移6人と,2腎目RCC多発の3人（1人他臓器への転移あり）の8人が2腎目への転移と推定された．
【文献】
1）寺沢良夫,広田むつ子,須藤誠二,野村禎子,野村幸宏,鈴木とよみ：腎癌の膵転移症例．第82回日超医学会学術集会講演抄録集 306:436,2009
2）柏木文蔵他：右腎摘,部分切除後に再部分切除術を施行した再発性腎癌,臨泌,65:667,2011