Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
産婦人科:異常妊娠

(S477)

既往帝王切開症例において子宮下部筋層の経時的観察は切迫子宮破裂の診断に寄与する

The age-related observation of uterine lower segment contributes the detection of uterine rupture in the cases of previous Cesarean section.

吉里 俊幸1, 小濵 大嗣2, 讃井 絢子2, 大竹 良子2, 宮本 新吾2

Toshiyuki YOSHIZATO1, Hirotsugu OBAMA2, Ayako SANUI2, Yoshiko OTAKE2, Shingo MIYAMOTO2

1福岡大学病院総合周産期母子医療センター, 2福岡大学病院産婦人科

1Center for Maternal, Fetal and Neonatal Medicine, Fukuoka University Hospital, 2Department of Obstetrics and Gynecology, Fukuoka University Hospital

キーワード :

【目的】
既往帝王切開症例において子宮下部前壁筋層ひ薄部の経時的な形状変化の特徴抽出から,切迫子宮破裂を診断するための新たな指標を同定することである.
【方法】
対象は2008年1月〜2011年9月に,当センターで管理した帝王切開分娩歴を有する母体胎児合併症のない単胎症例25例である.全例満期で選択的帝王切開術を施行した.開腹所見から子宮下部筋層欠損ないし筋層厚が概ね2mm以下を高リスク(H)群(13例),母体年齢,経妊回数をマッチさせ,切迫子宮破裂の所見のない症例12例をコントロール(C)群とした.妊娠20-24週(前期),30-34週(後期)で,母体膀胱を充満させ,経腟超音波断層装置(Aloka prosond 6, 経腟プローブの中心周波数:7.5MHz)を用い,矢状断面で下部前壁を描出した.筋層が膀胱下端から5-7cm描出できるように拡大し,画像データを取り込んだ.膀胱下端から頭側5cmまでで筋層が最も薄い部分を同定し,膀胱下断までの距離(D)と筋層厚(T)をoff-lineで計測した.各群内でD,Tを前後期間で比較検討した.統計学的解析はWilcoxon検定を用い,P<0.05を有意水準とした.
【成績】
DはH群,C群ともに前期から後期にかけて薄くなった(H群:前期:2.4±0.3(mean±SEM)mm vs.後期:1.4±0.2mm,C群:前期: 3.4±0.5 mm vs.後期:2.2±0.2mm)(P<0.05).DはH群では,前期(13.2±2.0mm)から後期(20.4±2.1mm)へと延長した(P<0.05)が,C群では前期(26.3±3.0 mm)と後期(30.1±2.5mm)間に差を認めなかった.
【結論】
妊娠中期に子宮下部筋層ひ薄部が膀胱下端付近にあり,妊娠経過とともに頭側へ移動する所見は,切迫子宮破裂症例に特徴的で,従来の筋層厚の計測に加え,これらの所見を組み合わせることで,より正確な切迫子宮破裂の診断が可能であると考えられた.