Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
産婦人科:胎児心臓2

(S472)

妊娠初期に診断し,管理した無心体双胎(TRAP sequence)の2例

Two cases of the twin reversed arterial perfusion(TRAP) sequence whom it was diagnosed in early pregnancy and cared

河野 通晴, 城 大空, 森崎 慎太郎, 吉田 敦, 増﨑 英明

Michiharu KONO, Ozora JO, Shintaro MORISAKI, Atushi YOSHIDA, Hideaki MASUZAKI

長崎大学病院産婦人科

Obstetrics and Gynecologist, Nagasaki University Hospital

キーワード :

【はじめに】
Twin reversed arterial perfusion(TRAP)sequenceは,無心症とも言われ,双胎の片方の児の心臓がない,あるいは痕跡心,無機能心である多胎妊娠を特徴とするまれな奇形である.TRAPsequenceの発生頻度は一卵性双胎の1%とされており,出生率は3万5,000出生に1例で超音波断層法により診断される.今回,妊娠初期にTRAP sequenceと診断し管理を行った2症例を経験したので報告する.
【症例1】
母親は30歳の1経妊1経産.自然妊娠成立後に近医産婦人科を受診した.最終月経から妊娠8週の時点での経腟超音波断層法で,心拍を認めるCRL15mmの児と7mmの胎児様構造物を認め,Ⅰ児死亡の1絨毛膜性2羊膜双胎の疑いで当科に紹介された.妊娠11週2日の超音波ドプラ検査にて逆行性臍帯動脈血流所見により無心体双胎と診断した.妊娠17週2日羊水深度(AFV)76mmと羊水増加傾向があり,妊娠22週2日AFV152mmと羊水過多を認めたため管理目的に同日入院した.健常児に明らかな心不全所見や浮腫は認めなかったが,羊水過多及び無心体児の増大を認めたため胎児鏡下吻合血管レーザー凝固術を目的に徳山中央病院産婦人科に妊娠22週3日母体搬送した.胎児治療後はAFV50mm前後で推移し,無心体は治療前に比べ縮小傾向を認めた.その後は当科外来で定期的な妊娠管理を継続した.経過は良好で,妊娠32週5日陣痛発来し経腟分娩した.健常児は1,784gの男児でApgarスコア7/8(1分後/5分後)で出生しNICUへ入院した.無心体は約70gでレーザー凝固後の臍帯とともに娩出された.
【症例2】
母親は38歳の初産婦.不妊治療の経過中に人工授精で妊娠した.妊娠11週4日の超音波断層法で胎児とは別の高輝度像を認めたため妊娠11週5日に当科に紹介された.超音波断層法で胎児心拍を認めない48mmの胎児様構造物を認めたため無心体双胎を疑い管理を行った.妊娠13週3日に超音波ドプラ検査で逆行性臍帯動脈血流所見を認めたため無心体双胎と診断した.その後は引き続き当科での外来管理を継続したが経過は良好で妊娠29週4日に管理目的に入院した.無心体の増大はなく,健常児の発育は良好であったが,妊娠35週より推定体重1,900gから発育が停滞した.妊娠37週6日に,子宮内胎児発育遅延及び骨盤位の診断で選択的帝王切開術を施行した.児は2,240gの女児でApgarスコア8/9で出生しNICUへ入院した.無心体は約100gで,泥状羊水とともに娩出された.
【おわりに】
妊娠初期に無心体と診断された2症例を経験した.一方は羊水過多の増悪のため胎児治療が必要であった.