英文誌(2004-)
一般口演
産婦人科:胎児心臓1
(S470)
当院における胎児大動脈縮窄/離断の出生前診断の検討
Prenatal diagnosis of coarctation of the aorta and interruption of aortic arch in Jikei hospital
堀谷 まどか, 和田 誠司, 梶原 一紘, 加藤 淳子, 土橋 麻美子, 田中 邦治, 種元 智洋, 大浦 訓章, 田中 忠夫
Madoka HORIYA, Seiji WADA, Kazuhiro KAJIWARA, Atsuko KATO, Mamiko DOBASHI, Kuniharu TANAKA, Tomohiro TANEMOTO, Kuniaki OURA, Tadao TANAKA
東京慈恵会医科大学産婦人科
Department of Obstetrics and Gynecology, The Jikei University School of Medicine
キーワード :
【背景】
大動脈縮窄/離断(CoA/IAA)は出生直後に緊急度の高い処置を要することがあるため,出生前診断の可否が児の予後に大きく影響すると言える.しかし,出生後の動脈管閉鎖に伴って生じるものも多いため,出生前診断が難しい疾患の代表とされる.今回,当院にて心エコーを行って,CoA/IAAと診断された症例及び出生後にCoA/IAAと診断された症例の超音波所見,合併奇形などにつき検討を行った.
【対象/方法】
2001年4月〜2010年3月までに当科で分娩あるいは管理を行った症例のうち,CoA/IAA疑いとされた症例でおよび当院にて出生後にCoA/IAAと診断された症例を対象とし,診療録から後方視的に超音波所見などを検討した.
【結果】
当科にてCoA/IAA疑いと診断された症例は25症例.うち14例は複雑心奇形を合併していたため,除外した.残り11例のうちで出生後にもCoA/IAAを認めたのは9例であった.また,出生後に初めてCoA/IAAと診断された症例が4例あった.うち2例は出生後すぐに緊急処置を必要とし,1例は死亡した.死亡例は18トリソミーであった.症例を正診グループ(9例),出生後診断グループ(4例),疑陽性グループ(2例)に分けて検討すると,染色体異常を伴っていた症例がそれぞれ3例,2例,1例であった.超音波断層法での所見の検討では,CoA/IAA以外の心奇形の合併は主に心室中隔欠損でそれぞれ,6例,1例,1例で認めた.心臓以外の外表奇形を伴っていた症例は4例,2例,2例であった.arch異常を認めた症例は正診グループでの2例のみで,大血管径比の異常は正診グループで6例,疑陽性グループで1例認めた.心室径比の異常は全症例で認めた.なお,出生後診断グループのうち2例は出生前に心エコー精査を行っておらず所見の検討が出来なかった.また疑陽性例の2例を詳しく検討すると,2例とも胎児発育不全を伴っており,1例は左心低形成,染色体異常を認めた.もう1例は臍帯卵膜付着を伴う重度の発育不全であった.
【考察】
CoA/IAAの診断を確実に診断する方法は未だ確立していない.過去の知見からarch異常の診断率はあまり高くなく,大動脈径比,心室径比の方が有用であるとの報告も多い.特にこれらは遅発性のCoAの出生前診断には有用とされる.今回の我々の結果でもarch異常はCoA/IAA症例の36%(4/11)で認めたが,大動脈径比では66%(6/11),心室径比では100%(11/11)とより高かった.また,CoA/IAA症例ではVSD,ASDの合併が多く認められることからこれらの所見がある時には注意して経過をみることで見逃しを減らせる可能性があると考えられた.しかし,疑陽性の例でも大動脈,心室の径比の異常が認められており,心奇形の合併も認めるため,疑陽性率を下げるためにはさらなる項目の検討が必要と考えられた.また,重度の胎児発育不全症例の場合には胎盤機能の低下に伴い,左室径の低下や大動脈逆流などが出現することがあり,CoA/IAAの所見との鑑別は難しいため出生後まで厳重な注意をして経過をみる必要があると考えられた.