Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
産婦人科:胎児心臓1

(S470)

Three-Vessel Viewの異常により紹介され診断した胎児右大動脈弓の一例

A case of right aortic arch with mirror-image branching

砂坂 京代1, 中田 雅彦2

Takayo SUNASAKA1, Masahiko NAKATA2

1徳山中央病院検査部, 2徳山中央病院周産期母子医療センター

1Clinical laboratory, Tokuyama Central Hospital, 2Perinatal Care Center, Tokuyama Central Hospital

キーワード :

【はじめに】
近年,胎児形態異常のスクリーニング,特に先天性心疾患のスクリーニングに関して教育啓蒙活動の普及やスクリーニングを行う医師や検査技師の技術向上によって諸種の疾患が出生前診断されている.特に3-vessel view (3VV)や3-vessel tracheal view (3VTV)の描出は,大血管に異常を伴う心疾患のスクリーニングに有用である.右大動脈弓に伴う血管輪は気管の狭窄の程度によっては出生後早期に症状を来すがその程度が軽度で心内構造異常を伴わない場合,出生前診断がなされなければ気づかれない場合もある.今回我々は3VVの異常によって精査目的で紹介され診断にいたった右大動脈弓の一例を経験した.
【症例】
33歳の初妊婦.近医にて妊婦健診を受けていたが30週時の超音波検査にて3VVおよび3VTVが上手く描出できないために紹介受診となった.32週での当院受診時の所見では,内臓は正位だった.4-chamber viewレベルでは心内構造に異常を認めなかったが,下行大動脈は脊椎の右前方に位置していた.3VVおよび3VTVの観察において上行大動脈は左室から起死した後,右側に偏位し椎体の右側を下行していた.肺動脈は右室から起死し気管と食道の左側を走行しており,その後方で右側に位置する大動脈との間に動脈管が認められ,血管輪を形成していた.頭部,腹部等,他の構造異常は認めなかった.以上より右大動脈弓による血管輪が形成されていると判断した.両側鎖骨下動脈の走行については明瞭な判断ができなかった. 児は,妊娠37週4日に陣痛誘発による経膣分娩にて出生した.出生体重2440gの男児でApgar scoreは8/9(1/5分)だった.出生後児に呼吸障害等の症状は認めなかったが,精査および経過観察のため一旦NICUに収容した.低血糖に対して輸液療法を行う以外は特に経過に著変無く経過した.生後2ヶ月での3D-CT検査にて,right aortic arch with mirror image branchingと診断された. 児は現在生後11ヶ月であるが血管輪による症状はなく経過中である.
【考察】
3VVや3VTVを用いた胎児心スクリーニングは未だ一般の日常臨床においては普及の途上であると言える.文献上,胎児診断される右大動脈弓による血管輪は左鎖骨下動脈がKommerellの憩室より起始異常するタイプが多く,またその場合には心内構造異常が少ないと言われている.一方,mirror image branchingでは種々の心内構造異常が多いと報告されており,今回の症例は比較的稀なタイプであったと思われる.3VVや3VTVを一次スクリーニングに用いることで稀な症例の発見に繋がることができた.