Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
産婦人科:胎児異常

(S468)

出生前診断した胎児総胆管嚢腫の8症例

Eight cases of fetal choledocal cyst

黒田 くみ子1, 杉林 里佳1, 青木 宏明1, 住江 正大1, 梅原 永能1, 渡邉 典芳1, 林 聡1, 名取 道也2, 左合 治彦1

Kumiko KURODA1, Rika SUGIBAYASHI1, Hiroaki AOKI1, Masahiro SUMIE1, Nagayoshi UMEHARA1, Noriyoshi WANATABE1, Satoshi HAYASHI1, Michiya NATORI2, Haruhiko SAGO1

1国立成育医療研究センター周産期センター, 2国立成育医療研究センター研究所

1Center for maternal-fetal and neonatal medicine, National Center for Child Health and Development, 2Research center, National Center for Child Health and Development

キーワード :

【目的】
胎児総胆管嚢腫の超音波所見の特徴ならびに臨床経過,予後について明らかにする.
【対象と方法】
2006年から2011年に当院で出生前に胎児総胆管嚢腫と診断され,妊娠・分娩管理した8症例の超音波所見および臨床経過を,診療録をもとに後方視的に検討した.
【結果と考察】
2006年から2011年に当院で出生前に胎児総胆管嚢腫と診断したのは8症例であった.他院からの紹介が7例,院内産科からの紹介が1例であった.紹介理由は腹部腫瘤が6例,卵巣腫瘍が2例であり,腹部腫瘤で紹介となった症例のうち1例はDouble bubble singと考え十二指腸閉鎖を疑っていた.前医にて初めて病変が指摘された時期は妊娠17週から36週であり,当科初診は20週から36週であった.8例中7例は初診時の超音波で総胆管嚢腫が疑われているが,1症例は十二指腸閉鎖を疑い,MRIにて総胆管嚢腫と診断した.超音波所見は,胆嚢と連続性を認める球形から楕円球形,紡錘形の嚢胞性病変が主であったが,1例は嚢胞にくびれのある形状を認めた.胃と拡張した嚢腫が連続しているような所見があり十二指腸閉鎖が疑われた症例を1例認めた.肝内胆管の拡張傾向を認める症例が1例認められた.嚢腫の大きさは胎児の発育とともに大きくなるものが多く,急激に大きくなるものや縮小するものは認めなかった.妊娠経過中羊水過多を認めたのは1症例のみであった.現在妊娠継続中の1例を除いた7例すべてで37週以降の誘発分娩を計画したが,2例で産科適応にて帝王切開となった.8例中7例が女児であった.妊娠継続中の1例および生後1ヶ月で希望により転医した1例を除いたすべての症例で日齢7から生後1年3カ月に開腹手術となり,その全例で胆管空超吻合術を行った.術後診断は総胆管拡張症5例,先天性胆道閉鎖症I-cyst型1例であった.
【結論】
胎児腹部の嚢胞性病変の鑑別疾患一つとして胎児総胆管嚢腫がある.多くは肝下面のほぼ球形状嚢腫という典型的な画像を呈するが,嚢腫にくびれを認めるものや十二指腸閉鎖と鑑別が難しい症例もあった.胎児総胆管嚢腫では乳児期に手術を必要とするが,予後は良好であった.