Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
産婦人科:婦人科腫瘍

(S463)

乳腺原発転移性子宮癌の1例

A case of metastatic uterine carcinoma derived from breast cancer

谷口 真由美1, 畠 二郎2, 竹之内 陽子1, 中武 恵子1, 岩井 美喜1, 麓 由起子1, 小島 健次1, 今村 祐志2, 眞部 紀明2, 春間 賢3

Mayumi TANIGUCHI1, Jiro HATA2, Yoko TAKENOUCHI1, Keiko NAKATAKE1, Miki IWAI1, Yukiko FUMOTO1, Kenji KOJIMA1, Hiroshi IMAMURA2, Noriaki MANABE2, Ken HARUMA3

1川崎医科大学附属病院中央検査部, 2川崎医科大学検査診断学, 3川崎医科大学消化管内科学

1Department of Clinical Laboratory, Kawasaki Medical School Hospital, 2Division of Endoscopy and Ultrasound, Department of Clinical Pathology and Laboratory Medicine, Kawasaki Medical School, 3Division of Gastroenterology, Department of Internal Medicine, Kawasaki Medical School

キーワード :

【はじめに】
性器外悪性腫瘍子宮転移の原発巣としては本邦では胃癌の頻度が高く,乳癌からの転移はまれである.乳癌術後6年目に子宮転移を来した1例を報告する.
【症例】
50歳代 女性
【主訴】
下腹部痛,残尿感,頻尿
【既往歴】
6年前に乳癌にて左乳房摘出
【現病歴】
20XX年6月,上記を主訴に他院婦人科受診.子宮頸部から前膣壁に硬結を認め,子宮頸部の生検にてsignet ring cellが検出された.粘膜面には癌細胞は認められず,転移が疑われるも頸部〜骨盤CTでは原発巣不明.乳癌再発検索の乳房超音波でも異常は指摘されず.精査加療目的にて当院臨床腫瘍科に紹介受診となった.
【血液生化学検査所見】
SCCが1.7ng/mL(基準値:1.5ng/mL)と軽度高値であった.
【内診所見】
子宮膣部および膣壁,円蓋は連続して硬く,両側傍子宮組織の引きつれを認めた.
【体外式超音波所見】
子宮頸部に輪郭の不整な低エコー域が見られ,内部エコーは均一.カラードプラ上,血流シグナルは検出されなかった.他臓器との強い関係は認めず,消化管をはじめとする腹部臓器に明らかな異常はなく,癌性腹膜炎の所見も指摘できなかった.以上の所見からは頸部原発の可能性も考えられた.
【PET CT】
膣壁に全周性の肥厚とFDG高集積あり.子宮頸部・体部に不均一ながらびまん性の集積あり.両側鼡径部の小リンパ節に軽度の集積を認めるも積極的に悪性を疑う所見は認めなかった.
【骨盤MRI】
膣壁,子宮頸部および体部の壁は肥厚し,造影効果あり.明らかな腫瘤構造は指摘できない.原発性膣癌や子宮癌としては病変が広範であるにもかかわらず周囲臓器への浸潤所見を伴わない点,転移としては腫瘤構造を認めない点でいずれも非典型的であり,既存構造を破壊せず進展する病変としては悪性リンパ腫やスキルスタイプ胃癌などが考えられた.
【造影CT】
膣から子宮頸部にかけて一部内腔に突出する造影効果を伴う腫瘤性病変あり.膣壁の造影効果は全周性に亢進し,浸潤の可能性も否定できない.
【乳腺組織診】
施術病院より組織標本を取り寄せ組織型を再検.乳腺組織内に浸潤径17mmの癌が存在.小型〜中等大の癌細胞が索状〜小充実性胞巣を形成し浸潤.細胞相互の接合性が比較的緩く,浸潤性小葉癌の診断であった.
【子宮頸膣部・頸管・体部細胞診】
子宮頸膣部・頸管からは一部に核の腫大した異型細胞が認められClassⅢ,体部からは低分化な癌が示唆される所見が認められClassⅤと判定された.
【子宮頸部組織診】
前医にて施行され子宮頸部生検の組織標本を再検.重層扁平上皮に異型は認めないが,下床の線維性間質部にはびまん性に異型細胞の増生あり.小型から中型の細胞で,明瞭な胞巣の形成はなく,核は概ね小型だが,一部の核は大型で多形性を有する.細胞質は好酸性を有するように見られ,不規則形で細胞質内に粘液球を含む細胞が散在.腺癌の像で乳腺浸潤性小葉癌からの転移腫瘍として矛盾しない組織像であった.
【治療経過】
経口ホルモン療法を開始し,2か月目の造影CTでは膣から子宮頸部の腫瘍は縮小傾向で,膣壁の濃染域も不明瞭化.患者の希望により他院にて経過観察中である.
【まとめ】
子宮転移を来す乳癌の組織型は浸潤性小葉癌が多く,既存構築を保ちつつ浸潤する発育形式を特徴とし,原発・転移ともに画像上捉えにくい場合もあり注意を要する.乳癌担癌もしくは術後患者の子宮に腫瘍を認めた場合,頻度は低いものの転移の可能性も考慮する必要があるが,原発性腫瘍との鑑別は容易でないと考えられた.