Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
産婦人科:母体心疾患と胎盤

(S461)

周郭胎盤は胎児超音波診断可能か?

Can ultrasonographic predict circumvallate placenta?

早田 桂1, 2, 佐藤 麻夕子1, 長冶 誠1, 清水 健治1, 小松 玲奈2, 吉田 信隆2

Kei HAYATA1, 2, Mayuko SATO1, Makoto NAGAJI1, Kenji SHIMIZU1, Reina KOMATSU2, Nobutaka YOSHIDA2

1鳥取市立病院産婦人科, 2広島市立広島市民病院産科婦人科

1Obstetrics & Gynecology, Tottori Municipal Hospital, 2Obstetrics & Gynecology, Hirosima City Hospital

キーワード :

【はじめに】
胎盤形態異常として,分葉胎盤や副胎盤,膜様胎盤,絨毛膜外性胎盤等が知られている.絨毛膜外性胎盤は画縁胎盤と周郭胎盤に分類され,特に周郭胎盤では早産や出血,胎児発育不全(Fetal Growth Restriction: FGR)の頻度が高いとの報告がある.肉眼的には卵膜が胎盤辺縁で二重に折り重なるため,厚い画縁を呈し,胎児面が狭くなる状態である.一般的に周郭胎盤の胎児超音波診断は困難とされるが,小さな胎盤や,胎盤肥厚を指摘される症例には少なからず周郭胎盤が存在しているのではないかと考える.胎盤エコー像での胎児面(絨毛膜板)と母体面(基底膜板),それぞれの距離を計測する事で,周郭胎盤の診断が可能であるか,実際の症例を基に検討した.
【症例1】
34歳,0経妊0経産.自然妊娠.妊娠26週6日にFGR紹介.推定体重500g(-3.6SD).明らかな胎児異常なし.胎盤は子宮右側壁付着,胎盤長径8.7cm,胎盤厚7.2cmで胎盤低形成と診断.発育停止,臍帯動脈血流途絶/逆流,胎児機能不全のため妊娠27週5日に緊急帝王切開施行.出生体重524g(-3.9SD).AS6/8.胎盤重量128g.胎盤サイズ10×8×2.5cmで母体面より胎児面が明らかに小さく周郭胎盤であった.出生児は多臓器不全のため日齢17日目に死亡した.
【症例2】
36歳,1経妊0経産.体外受精妊娠.妊娠27週1日にFGR紹介.推定体重764g(-1.8SD).明らかな胎児異常なし.胎盤は子宮左側壁付着,胎盤長径12.2cm,胎盤厚6.0cmで胎盤肥厚を認めたが,注意深く確認すると胎盤は折れ重なっているように描出され,胎盤厚は30mmであり,超音波上は母体面より胎児面が小さく周郭胎盤と診断.徐々に胎児発育緩慢となり,妊娠37週0日に選択帝王切開施行.出生体重1772g(-2.9SD).AS9/9.胎盤重量332g.胎盤サイズ14×12×2cmで母体面より胎児面が小さく周郭胎盤であった.
【症例3】
32歳,1経妊1経産.体外受精妊娠.妊娠24週3日にFGR紹介.推定体重343g(-3.5SD).明らかな胎児異常なし.胎盤は子宮後壁付着で胎盤長径9cm,厚さ3.0cm.超音波上は胎盤自体も小さいが,母体面より胎児面が小さく周郭胎盤と診断.以後も発育停止や血流異常を認めず,妊娠36週2日に選択帝王切開施行.出生体重1230g(-4.5SD),AS9/9.胎盤重量320g,胎盤サイズ15×14×2cmで母体面より胎児面が小さく周郭胎盤であった.
【症例4】
30歳,0経妊0経産.自然妊娠.妊娠22週3日にFGR紹介.推定体重296g(-2.7SD).明らかな胎児異常なし.胎盤は子宮前壁付着で胎盤長径9cm,厚さ2.1cm.初診時の胎盤エコー像では明らかな周郭胎盤ではなかったが,胎盤自体は小さく,以後週数を重ねるごとに,母体面に比して胎児面が狭くなっていく様子が伺えた.29週頃より尿蛋白が出現し,30週頃より血圧上昇を認め,妊娠高血圧症候群と診断.妊娠33週3日に常位胎盤早期剥離となり全身麻酔下に緊急帝王切開施行し1114g(-3.9SD)の児をAS2/7で出産した.胎盤重量322g,胎盤サイズ12×12×2cmで周郭胎盤であった.
【結語】
4症例とも胎盤の子宮付着部位は異なっていたが,周郭胎盤と出生前診断した.特に子宮側壁に付着した2症例では,胎盤は折れ重なるように強く屈曲して描出され,それぞれの胎盤厚が重なっているため,いかにも胎盤が肥厚しているように描出される所見であった.FGR症例の胎児超音波検査時に胎盤肥厚を指摘された場合でも,娩出された胎盤厚は2〜3cm程度で,結果的に周郭胎盤である症例が多い.胎盤は子宮付着部位で描出が変化することに注意し,超音波検査時に胎盤の胎児面と母体面を計測することで,周郭胎盤を胎内診断できる可能性が示唆された.