小林 翠, 長谷川 潤一, 仲村 将光, 濱田 尚子, 松岡 隆, 市塚 清健, 岡井 崇

Midori KOBYASHI, Junichi HASEGAWA, Masamitsu NAKAMURA, Shoko HAMADA, Ryu MATSUOKA, Kiyotake ICHIZUKA, Takashi OKAI

昭和大学産婦人科

Obstetrics and Gynecology, Showa University

キーワード :

【目的】
胎盤の大きさは胎児の発育に強く相関することが知られている．我々は,胎児発育不全の原因は様々あるが,それらの多くの症例で分娩時の胎盤が小さいことを報告してきた．今回は,妊娠中の胎盤体積の測定によって胎児発育不全などの周産期異常を予測することを目的として,3D超音波を用いて妊娠初期と中期の胎盤（初期は繁生絨毛）の体積を測定し,その時期の体積分布を明らかにした．
【方法】
2011年7月より,妊娠初期（11週0日から13週6日まで）に当院で妊婦健診を受けた症例を対象に,胎盤体積を3D超音波を用いて測定した．使用した機器は,Volson E8 （GE health care）,4-8MHz経腹トランスデューサーである．体積計測にはVOCAL（Virtual Organ Computed-acid Analysis）法を用い,30度ごと6回トレースを行い計算した．子宮筋層や脱落膜領域と思われる場所よりもhigh echoicに描出される繁生絨毛（胎盤）がすべてボリュームデータとして取り込まれるように,ROIおよび角度を調節した．妊娠週数は,妊娠10週までに基礎体温,月経周期,頭殿長などから確認した．また,2011年9月より中期（妊娠20週）の胎盤体積の測定を,初期と同様の方法で行った．本検討は,当院の倫理委員会の承認の下で行われ,各妊婦からはインフォームドコンセントを得ている．
【結果】
胎盤体積は,妊娠初期369例で測定し,その内中期にも測定した例は40例であった．初期の体積は在胎日数に強く依存し,その平均値は回帰式　V （cm3） = 0.05 x GD 2 - 6.92 x GD +278.02 （GD; gestational days）で表された．妊娠中期の胎盤体積の分布は,220.0±77.3 cm3であった．それぞれの分布より,胎盤体積のz-scoreを求めた．上記の40症例において妊娠初期と中期の胎盤体積のz-scoreには有意な相関関係を認めた （r=0.435, p=0.018）．
【考察】
3D超音波を用いることで妊娠初期および中期に胎盤（繁生絨毛）体積を簡便に計測することができた．妊娠初期の繁生絨毛の体積と中期の胎盤体積には強い相関関係があり,妊娠初期の絨毛発育はその後の妊娠経過に伴う胎盤形成と深く関連することが示唆され,その計測は将来,胎児発育不全などの異常の予測に役立つ可能性があると思われた．