Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
産婦人科:母体心疾患と胎盤

(S460)

周産期心筋症における左室拡張機能障害

Left ventricular diastolic dysfunction in high risk pregnancy of peripartum cardiomyopathy

宮崎 のどか, 小出 菜月, 鵜飼 真由, 近藤 真哉, 古株 哲也, 邨瀬 智彦, 原田 統子, 岸上 靖幸, 小口 秀紀

Nodoka MIYAZAKI, Natsuki KOIDE, Mayu UKAI, Shinya KONDO, Tetsuya KOKABU, Tomohiko MURASE, Toko HARATA, Yasuyuki KISHIGAMI, Hidenori OGUCHI

トヨタ記念病院 周産期母子医療センター産科

Department of Obstetrics, Perinatal Medical Center, Toyota Memorial Hospital

キーワード :

【緒言】
周産期心筋症(PPCM)は,明らかな心疾患の既往のない健康な女性が妊娠最終月から分娩後5ヵ月までに発症する拡張型心筋症の一亜型である1,2).PPCMは一般的に比較的稀な疾患であると考えられているが,発症した母体の致死率は6から23%であり,早期診断,適切な治療が非常に重要な疾患である.PPCMの危険因子としては年齢,多産婦,妊娠高血圧症候群(PIH),多胎妊娠,長期の子宮収縮抑制剤使用,黒色人種などが知られている1,2).しかし,PPCMの発症に関わる要因や機序は未だ明らかではなく,発症の予測に関しても有効な方法は検討されていない.
【目的】
PPCMの診断には心臓超音波検査(UCG)が最も有用であり,左室収縮機能障害が特徴的であるが,それ以外の左室機能障害の詳細な報告はない.今回我々は,PPCMのハイリスク妊娠において詳細な心機能評価を行い,左室拡張機能障害を含む左室機能障害とPPCM発症との関連性を前方視的に検討した.
【対象と方法】
2007年6月から2011年8月の間に当院で分娩したPPCMのハイリスク妊娠462例を対象とした.妊娠高血圧症候群,多胎妊娠,長期の子宮収縮抑制剤使用,40才以上をPPCMのハイリスク妊娠とし,妊娠後期から分娩5ヵ月後までの間に分娩前後でUCGを行った.左室収縮機能の指標として左室駆出分画(LVEF)を用い,45%未満を左室収縮機能障害とし,左室拡張機能の指標として拡張早期僧帽弁血流速度/僧帽弁輪速度比(E/E’)を用い,15以上を左室拡張機能障害とした.左室収縮機能障害,左室拡張機能障害の頻度とそのリスク因子を多変量解析を用いて検討した.
【成績】
PPCMハイリスク妊娠におけるPPCMの発症率は1.7%(462例中8例)で,全例で左室収縮機能障害を認めた.左室拡張機能障害の発症率は8.3%(448例中37例)であった.左室拡張機能障害を伴った症例のPPCM発症率は16.2%(37例中6例)と有意に高かった.多変量解析では妊娠高血圧症候群と経産婦が左室拡張機能障害の発症因子と考えられた.
【結論】
左室拡張機能障害は比較的高頻度に発症しており,妊娠高血圧症候群と経産婦では特に注意が必要である.また,左室拡張機能障害がPPCMの発症予測に有用な可能性が示唆された.
【参考文献】
1)Elkayam U, Akhter MW, Singh H, et al: Pregnancy-associated cardiomyopathy clinical characteristics and a comparison between early and late presentation. Circulation 111: 2050-2055,2005
2)Sliwa K, Fett J, Elkayam U: Peripartum cardiomyopathy. Lancet 368: 687-693, 2006