Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
消化器:消化管3

(S458)

造影超音波による消化管出血の診断に関する検討

Efficacy of enhanced ultrasonography for diagnosis of hemorrhagic gastrointestinal disease

山下 直人1, 畠 二郎2, 筒井 英明3, 石井 学3, 今村 祐志2, 眞部 紀明2, 鎌田 智有3, 楠 裕明3, 井上 和彦1, 春間 賢3

Naohito YAMASHITA1, Jiro HATA2, Hideaki TSUTSUI3, Manabu ISHII3, Hiroshi IMAMURA2, Noriaki MANABE2, Tomoari KAMADA3, Hiroaki KUSUNOKI3, Kazuhiko INOUE1, Ken HARUMA3

1川崎医科大学総合臨床医学, 2川崎医科大学検査診断学, 3川崎医科大学内科学食道胃腸科

1Department of General Medicine, kawasaki Medical School, Kurashiki, 2Department of Clinical Pathology and Laboratory Medicine, Kawasaki Medical School, Kurashiki, 3Division of Gastroenterology Department of Internal Medicine, Kawasaki Medical School Hospital, Kurashiki

キーワード :

【背景】
日常臨床において消化管出血を疑う症例を多く経験するが.その診断は上部消化管内視鏡,大腸内視鏡,プセル内視鏡,ダブルバルーン内視鏡が使用されるが,患者への侵襲が大きく,またこれら全てが十分普及しているとは言い難い.一方で体外式超音波検査(Ultrasonography:US)は簡便かつ非侵襲的であり,各消化管疾患に対する臨床応用に注目が集まっている.しかし消化管出血に対する報告例は少なく,更に造影USに関する報告は非常に少ない.また我々は第84回本学会総会において,大腸出血や小腸出血に対する非造影USの有用性について報告した.
【目的】
造影超音波による消化管出血の診断に関する有用性と問題点について検討する.
【対象と方法】
対象は2007年1月から2010年12月までに,吐下血を主訴に当院を受診して,内視鏡検査に先行して造影USを施行した患者で,その後の内視鏡検査で出血あるいは出血点の証明がなされた56例(男性32例,女性24例,平均年齢67.9歳)である.全例無処置でUS施行し,使用機種は東芝SSA-770A他各種を,プローブは3.5MHzコンベックスあるいは6 MHz,7MHzリニアプローブを使用し,造影は当院倫理委員会の承認を受けた上で,ソナゾイド を low MI imaging で使用した.確定診断は各種内視鏡検査および病理所見を総合的に判断して行い,これを基準として①造影USおよびB-modでの検出率,②造影USで検出可能となった症例の特徴,③活動性出血が存在していた場合の診断能,④検出不能症例の特徴とその予後について検討した.
【結果】
56例中2例は各種内視鏡検査を繰り返し施行するも出血原因不詳であったため,残り54例について検討した.①造影USでの検出率は40例(74%),B-modeでの検出率は34例(63%)であった.②造影USで検出可能になった6例(11%)は,胃デュラフォイ潰瘍1例,小さな直腸潰瘍2例,小腸毛細血管拡張1例,小腸びらん2例で,内腔に凝血塊を認めるなどでおおよその病変部位が推定できており,造影を施行するとextravasationを認め出血点が指摘できた症例であった.③活動性出血が存在していたのは10例で,内8例は造影USでもextravasationを認め診断可能であった.診断できなかった2例は,小さな胃過形成性ポリープよりの軽度の出血,十二指腸乳頭付近の非常に小さな潰瘍からの出血でB-modeでその存在が指摘困難な症例で,内視鏡的加療を要した.④検出不能は14例で,うち上記の2症例以外の12症例はextravasation を認めない症例であった.この内,5例は保存的加療で改善し,内視鏡的に出血確認されなかったが総合的に出血原因と推測された小腸びらん2例および大腸憩室2例,尿道バルン挿入されていて膀胱虚脱状態で検査した小さな直腸潰瘍1例であった.6例は内視鏡的加療を行い,体部後壁にあり観察困難であった胃潰瘍2例,潰瘍面の小さな十二指腸潰瘍2例,他院施行の大腸ポリープ粘膜切除後潰瘍1例,糞便充満していて指摘困難であった直腸後壁の潰瘍1例であった.1例は大腸内視鏡の直腸内反転時に再出血した内痔核で,外科的加療となった.
【結語】
造影USは消化管出血の診断に関し,B-modeの検出能を上乗せする効果があるが,B-modeでの検索がもともと困難である症例では効果が乏しい.また内視鏡と違って非侵襲的であるため,一旦止血状態にある病変にはextravasationを認めないことに留意する必要がある.