Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
消化器:消化管3

(S457)

虚血性大腸炎に対する診断と経過観察に対する腹部エコー検査の有用性について

The utility of the abdominal ultrasonography to the diagnosis and the follow up observation of the ischemic colitis

武藤 修一1, 高橋 亜希2, 福島 拓1, 高橋 一宏1, 宮本 秀一1

Shuichi MUTO1, Aki TAKAHASHI2, Hiraku FUKUSHIMA1, Kazuhiro TAKAHASHI1, Shuichi MIYAMOTO1

1苫小牧市立病院消化器内科, 2苫小牧市立病院検査科

1Gastroenterology, Tomakomai city general hospital, 2Inspection department, Tomakomai city general hospital

キーワード :

【目的】
虚血性腸炎は,可逆性の限局性虚血性病変を定義とされるが,その診断については内視鏡検査による診断が第一と考えられている.近年,消化管エコー検査の有用性が認知されており,虚血性腸炎の診断や経過観察に対して,腹部エコーが有用か検討を行った.
【対象と方法】
対象は2008年1月〜2011年6月までに当院で虚血性腸炎と診断された76例(男性21例,女性55例),年齢中央値65.5歳(28歳から95歳)に対して検討を行った.診断のためには,画像診断として,腹部エコー,大腸内視鏡検査,CT検査のいずれかの検査を行っていた.そして,虚血性大腸炎の診断のために用いた検査,経過観察のために用いた検査について検討を行った.また,それぞれの検査によって診断した際の病変の範囲について比較・検討した.
【結果】
まず臨床所見としては,病型は狭窄型2例以外は一過性型であった.年齢は,49歳以下では男女差は見られないが,50歳以上になると女性の発症頻度が高くなる傾向を認めた.症状としては,腹痛と血便が多い症状であり,あまり年齢による差は見られなかった.また,70歳以上の高齢者では高血圧症,脂質異常症などの基礎疾患を持っている頻度が高い傾向が見られたが,69歳以下では基礎疾患を有さない症例が,多く見られた.その代わりに,便秘の症状を有していた患者の割合が多く認められるようになった.次に,虚血性大腸炎の診断をつけるために行った画像検査について検討した.発症後3日目までにどの画像検査を施行したか解析すると,CT検査が87%と最も多く,内視鏡は57%,エコー検査は36%であった.その後の経過観察に使用した画像検査は,内視鏡が64%,CTは17%,エコー検査は20%であった.また,78%の症例で下行結腸の病変を有していた.診断時に,複数の検査を行った症例について検討すると,内視鏡検査は腹部エコーや腹部CT検査で同様の病変範囲と診断したのは,それぞれ47%,22%であった.そして,内視鏡のほうがCTやエコー検査よりも病変を狭く評価する傾向がみられた.エコーとCT検査は,65%の症例でほぼ同様の範囲を病変と診断された.病変を全くの不一致として評価した症例は見られなかった.また,症状の改善が遅く,入院期間が長かった3名の症例は,退院日になっても壁肥厚が改善はしているものの残存している状態であった.
【結論】
内視鏡・CT・エコーの病変診断は同様であり,腹部エコーによる診断も十分に可能と考えられた. 経過観察では,病変の改善はどの検査でも可能であるが,侵襲の少ないエコーでのフォローアップが有用と考えられた.未だ,消化管エコー検査の臨床の有用性は認知されているとはいえない現状であるが,今後診断から治療経過,また治療何十例を推測することまで,腹部エコー検査は非常に重要な検査となっていくと考えられた.