Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
消化器:胆道2

(S455)

ソナゾイドによる造影腹部超音波検査が診断に有用と考えられた胆嚢癌の一例

Utility of Sonazoid enhanced transabdominal US for diagnosis of gallbladder cancer ; a case report

内田 博起, 佐藤 淳一, 藤吉 俊尚, 松岡 歩, 徳井 未奈礼, 坂野 閣紀, 飯塚 昭男

Hiroki UCHIDA, Junichi SATO, Toshihisa FUJIYOSHI, Ayumu MATSUOKA, Minare TOKUI, Kakunori BANNO, Akio IIZUKA

岡崎市民病院消化器内科

Gastroenterology, Okazaki city hospital

キーワード :

【はじめに】
ソナゾイドによる造影超音波検査は血行動態を反映した組織特異性を評価するのに優れた検査法の一つであり,疾患の存在診断,鑑別診断,治療支援に有用とされる.当院では,肝腫瘤性病変の鑑別のほか,膵腫瘍や胆嚢腫瘍など肝外病変に対しては保険適応外であるために,倫理委員会(IRB)の承認のもとに適応を拡大しソナゾイドによる造影超音波検査を用いている.今回,ソナゾイドによる造影腹部超音波検査が診断に有用と考えられた胆嚢癌の一例を経験したので報告する.
【症例】
60歳,男性.愁訴は,健診腹部超音波異常.現病歴としては,健診腹部超音波検査で胆嚢壁肥厚を指摘され,近医受診.当院での精査を勧められ受診された.既往は,胃癌にて胃全摘(35歳),ダンピング症候群,狭心症.無症候性脳梗塞.投薬歴は,塩酸エホニジピン,ロサルタンカリウム,低用量アスピリン,以上内服と硝酸イソソルビド貼付剤外用.来院時現症は,眼瞼結膜に貧血なく,眼球結膜黄染なし,体表リンパ節を触知せず,胸部聴診上心音呼吸音に異常なし,腹部は,平坦軟で腫瘤を触知せず,圧痛なし.腹部自覚愁訴なし.血液生化学所見は,WBC 7100 /μl,RBC 416万/μl,Hb 14.0 g/dl,PLT 33.2万/μl,AST 28 IU/l,ALT 26 IU/l,LDH 192 IU/l,ALP 193 IU/l,γGTP 69 IU/l,AMY 67 IU/l,glu 103 mg/dl CRP 0.1 mg/dl.腫瘍マーカーは,CEA 6.2 ng/ml,CA19-9 198 U/ml.腹部造影CTでは,胆嚢腫大なく,び慢性壁肥厚を認め,早期相における造影効果を不均一に認めたが,血流豊富とまでは評価しえなかった.腹部USでは,著明な胆嚢壁肥厚を認めた.壁内の血流は明らかでなかった.ソナゾイドを用いた造影USによる血行動態の評価の良い適応と考えられ実施した.ソナゾイド投与後16秒より胆嚢壁に流入する造影効果を認めた.胆嚢壁にRASと思われる無エコー領域はなく,早期から不均一に充満して濃染し,壁肥厚で内腔が充満したイメージが持続したことから胆嚢癌と診断した.クッパー相での肝SOLスクリーニングも行い,明らかなdefectなく,転移性病変の存在は否定的であった.その後,上部下部消化管スクリーニングおよび生理機能スクリーニング行い,拡大胆嚢摘出術を行った.切除標本は,胆嚢頚部〜体部にかけての結節膨脹型,大きさ3.0×2.5cm.病理診断は,adenocarcinoma,moderately differentiated, se, pHinf1a, pBinf0, pA0, pN2, pBM0, pHM0, pEM0, stageIVa であった.胆汁瘻の合併症みとめたが術後第57病日退院された.退院後は,術後化学療法のため通院中である.
【考察】
ソナゾイドを用いた造影超音波検査は,通常のBモードやドプラモードでは評価しえない血流を可視化しえる.今症例では,胃全摘後ということもあり,超音波内視鏡による精査もしえず,ソナゾイドを用いた造影超音波検査により新たな血流情報を付加することで,診断に有用と考えられた.
【結語】
ソナゾイドによる造影腹部超音波検査が診断に有用と考えられた胆嚢癌の一例を経験した.