Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
消化器:消化管3

(S455)

急性腹症に対する消化管超音波診断-外科の立場から

Ultrasonic diagnosis for acute abdomen-From a point of view of a surgeon

大堂 雅晴1, 垂水 綾2, 富園 正朋2, 中川 麻里2, 堀 英昭1

Masaharu ODO1, Aya TARUMI2, Masatomo TOMIZONO2, Mari NAKAGAWA2, Hideaki HORI1

1小林市立病院外科, 2国立病院機構熊本医療センター生理機能検査室

1Department of Surgery, Kobayashi Municipal Hospital, 2Department of Physical Examination, National Hospital Organization Kumamoto Medical Center

キーワード :

【はじめに】
急性腹症における,診断から治療へのステップを迅速,正確かつ低侵襲に進めることが患者救命の鍵となる.腹部超音波検査(US)はそれらを兼ね備えた唯一の検査であるが,急性腹症の多くがイレウスをはじめとする消化管疾患であり消化管ガスイコールUSの弱点であるとの観念からUSが敬遠され,CTに対する依存度が高いのが現状である.しかし近年,高齢患者が増加し,全身状態,腎機能低下の問題より造影CTが施行できずacute mesenteric ischemiaなどの血流評価が必要とされる疾患に対してCTのメリットが活かされないケースが多く経験される.今回,このようなacute mesenteric ischemiaが疑われる症例に対して第2世代超音波造影剤を使用したUS(CEUS)を行い,開腹,腸切除の適応決定に対する診断能について検討した.
【対象】
2009年12月より 2011年11月までに急性腹症US,CEUSを施行し,手術適応を検討した20症例を対象とた.(門脈気腫症例7例,絞扼性イレウス5例,虚血性腸炎2例,腹壁瘢痕ヘルニア2例, 虚血性腸壊死1例,上腸間膜動脈閉塞症1例,麻痺性イレウス1例,好酸球性腸炎1例)
【方法】
使用機種は東芝社製AplioXG,コンベックスタイプPVT375BT, GE横河メディカル製Logic9E,コンベックスタイプC1-5D, Aloka社製Prosound α7,コンベックスタイプUST-9130,リニアタイプUST-5412を使用した.検査手順は,腹部スクリーニングを行い,腹水,腸管拡張の有無,key board sign,to and froの検索を行ったのち腸管壁の変化のある部位においてソナゾイド0.015ml/kgをボーラス投与し腸管造影パターンを経時的に観察した.
【結果】
手術症例(S)および非手術症例(C)との比較検討にて,腹水はS:90%, C:50%, 腸管拡張,S:80%, C:20%, keyboard sign, S:20%, C:0%, to and fro sign, S:50%, C:10%とすべての所見においてS群に多い傾向にあった.CEUSにて造影陰性8例は全症例開腹の適応と判断した.7例腸切除,1例絞扼解除術を行った.
【考察】
造影陽性例のうち1例は診断困難であり試験開腹適応となったが,病理組織にて好酸球性腸炎であり薬剤治療の可能性も示唆された症例であった.
【結語】
Acute mesenteric ischemiaは急性腹症の中でも救命のための早期診断が重要であるが,fundamental USのみでは手術適応判断は困難であった.CEUSは腸管レベルでの血流評価を可能とし,これまでやむなしと考えられていた試験開腹を回避するための有用なモダリティーであると考えられる.