Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
消化器:胆道2

(S454)

巨大胆嚢未分化癌の一例

A case of undifferentiated giant carcinoma of the gallbladder

秋葉 恵美子1, 鈴木 基郎1, 渡邉 康代1, 佐藤 由美子1, 水谷 正彦2, 北浦 幸一3, 金輪 智子3, 若杉 聡4, 平田 信人5, 石田 秀明6

Emiko AKIBA1, Motoo SUZUKI1, Yasuyo WATANABE1, Yumiko SATO1, Masahiko MIZUTANI2, Kouichi KITAURA3, Tomoko KANAWA3, Satoshi WAKASUGI4, Nobuto HIRATA5, Hideaki ISHIDA6

1安房地域医療センター臨床検査室, 2安房地域医療センター外科, 3亀田総合病院超音波検査室, 4亀田総合病院消化器診断科, 5亀田総合病院消化器内科, 6秋田赤十字病院消化器科

1Department of Clinical Laboratory, Awa Regional Medical Center, 2Department of Surgery, Awa Regional Medical Center, 3Ultrasonography Center, Kameda Medical Center Hospital, 4Department of Digestive Diagonosis, Kameda Medical Center Hospital, 5Department of Gastroenterology,Division of Internal Medicine, Kameda Medical Center Hospital, 6Department of Gastroenterology, Akita Red Cross Hospital

キーワード :

【症例】
85歳,女性
【主訴】
上腹部違和感
【現病歴】
2カ月前より上腹部違和感,1カ月前より寒気や熱感を体に感じ,その後胸が絞めつけられるようになり,当院消化器内科を受診となった.
【初診時現症】
眼瞼結膜に軽度の貧血を認めた.下腹部正中に子宮後屈の手術瘢痕を認めた.右上腹部に手拳大の腫瘤を触知した.表面はおおむね平滑,硬さは弾性・硬・可動性の乏しい腫瘤であった.また下肢に軽度浮腫を認めた.
【検査時検査所見】
軽度の貧血を認める以外に異常所見を認めず,腫瘍マーカーもCA19-9が軽度の上昇を示しているのみであった.
【超音波検査所見】
右上腹部に116×71mm大の分葉形の巨大な充実性腫瘤像を認めた.腫瘤は大動脈右側,右腎腹側上極〜下極レベルに位置していた.境界明瞭,内部は肝とほぼ等エコーで軽度不均一であった.内部に線状の豊富な血流シグナルを認め,血流は拍動性パターンを呈していた.腫瘤足側に類円形の無エコー域を認めた.正常の胆嚢を認めず,この無エコー性部分を胆嚢とすると,腫瘤は胆嚢の一部と思われた.腫瘤は右腎,膵頭部,肝とは境界明瞭であった.十二指腸は腫瘤により正中側に圧迫され,偏位していた.腫瘤周囲に胃が接していたが,明らかな交通は認めなった.以上より胆嚢癌を考えたが,巨大な腫瘤にしては周囲浸潤傾向が乏しい点が典型的ではないと思われた.
【CT所見】
腫瘍は胆嚢頚部から体部の病変で,腫瘤足側の境界明瞭な低濃度腫瘤は腫大した正常の胆嚢底部と思われ,位置関係から胆嚢頚部から体部を占める巨大な腫瘤と思われた.
【超音波内視鏡】
十二指腸の固有筋層に相当する第4相が腫瘤に連続し,腫瘤は十二指腸壁に浸潤しているものと考えた.腫瘤は総胆管を圧迫し,総胆管が狭窄していた.
【造影超音波検査】
腫瘍の大部分は造影されず,通常のBモード画像に比べて壊死・変性の範囲が広いと思われた.Bモード画像で壊死範囲と思われた部分より広い部分が造影されず,大部分は壊死・変性している腫瘍と考えた.後血管相で肝S5-8に小類円形造影欠損像を認め,ソナゾイド再静注によりこの欠損像は早期に濃染し,転移と診断された.手術困難とされ,対症療法を選択したが,その間腫瘍は急速に増大し,十二指腸を狭窄し,食事摂取困難となった.そのため十二指腸ステントを挿入したが,ステント近傍に穿孔をきたし,その後全身状態が悪化し,2010年8月に死亡の転帰となった.
【剖検】
腫瘍は右上腹部に認め,小児頭大の弾性,硬の腫瘤で肝を圧迫するように進展していた.内部は壊死性変化が著しかった.胆嚢頚部から発育し,頚部の内腔を強く狭窄させていた.底部は膿が貯留していた.また,腫瘍は胆管・十二指腸に浸潤し,横隔膜に多数の結節を認め,播腫性結節と思われた.肝にも最大2cmの転移を認めた.
【病理】
病理組織上は核異型が比較的軽度の紡錘形細胞が密に増殖しており,破骨細胞様多核巨細胞が散見された.C-kitやCD34が陰性であった.上皮マーカーも陰性だが,P63が陽性であり,上皮由来の化生癌を考えた.破骨細胞様多核巨細胞があることから胆嚢原発の未分化癌と診断した.
【考察および結語】
胆嚢癌の中で未分化癌は稀な疾患である.1985年以降,本例を含めて27例の報告があるのみである.胆道癌登録調査でも切除例の0.98%を占めるに過ぎない.胆嚢未分化癌の特徴として進行速度は著しく,膨張発育し巨大化しやすい.また診断時は多臓器浸潤,腹膜播腫,リンパ行性転移,血行性転移などを起こすことが多く,予後は著しく不良である.今回も診断時には巨大であるが,周囲浸潤傾向は軽度で,膨張発育する胆嚢未分化癌の特徴を有していた.比較的稀と思われ,報告する.