Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
消化器:胆道2

(S453)

気腫性胆嚢炎の1例と,その超音波診断について

A case of a Emphysemaous Cholecystitis, and ultrasonographic diagnosis of the disease

鈴木 正敏1, 廣田 健児1, 福田 六花1, 細田 誠也1, 加地 正明2, 斉尾 武朗2, 渡辺 雅子3, 岩田 英子3, 下山 智子3, 増田 隆司3

Masatoshi SUZUKI1, Kenji HIROTA1, Rikika FUKUDA1, Seiya HOSODA1, Masaaki KAJI2, Takeo SAIO2, Masako WATANABE3, Eiko IWATA3, Tomoko SHIMOYAMA3, Takashi MASUDA3

1フジ虎ノ門整形外科病院外科, 2フジ虎ノ門整形外科病院内科, 3フジ虎ノ門整形外科病院検査課

1Surgery, Fuji-Toranomon Orthopaedic Hospital, 2Medicine, Fuji-Toranomon Orthopaedic Hospital, 3Clinical Laboratory, Fuji-Toranomon Orthopaedic Hospital

キーワード :

【はじめに】
胆嚢炎の中でも,気腫性胆嚢炎は頻度が少ない.原因は胆嚢腸管婁が存在するか,ガス産生菌による胆汁感染であるが,その超音波所見は,胆嚢内にガスを含んでいるため,腸管との鑑別を必要とし,近くの腸管との関係をUS所見だけで,理解するのは困難と考えられる.今回我々はガス像を胆嚢の斜め背後から観察することにより,理解しやすい画像を得られ,気腫性胆嚢炎のUS所見について考察したので報告する.
【症例】
80才代,男性.左脳出血後遺症,認知症などのため,老人保健施設に入所中,2011年9月黄疸(TB4.6)を認めたが,数日で自然軽快した.11月発熱のため,検査入院した.仰臥位でのUS検査では,腹部の前方からの走査では胆嚢の同定はできなかった.しかし,右側背部よりの走査で,胆嚢は軽度腫大し,debrisが沈殿していた.胆嚢を右背部から見上げるように走査することにより,ガスと胆汁の間のniveaux様の所見として認識しえた.尚,肝外胆管内に総胆管結石を1個認めた.単純CTでも胆嚢底部のガスが存在し,気腫性胆嚢炎の所見であった.PTGBDを施行して,黄色に混濁した胆汁と2ml以上のガスを吸引した.その後のPTGBD造影では,総胆管内に複数の総胆管結石を認めたが,胆嚢と腸管との交通は認めなかった.胆汁培養検査ではKlebsiella属が検出された.合併症のため手術はせず,PTGBDのまま経過観察しているが,PTGBD後1か月で,症状は消失したままである.
【考察】
気腫性胆嚢炎のUS所見については,無記載であるか,胆嚢底部の腸管または充満結石様の高エコー像に強いASを伴う場合が多い.極少数,胆嚢内沈殿物内に埋没する微小ガス像の所見が見られる.今回のUS所見は,niveauxを右後から観察したものである.肘膝位などに変換すれば,同様なUS画像を観察できる可能性もあったが,自発的な体位変換が困難な高齢者では,仰臥位のみの検査でも,ウィンドウとビームの方向により,気腫性胆嚢炎の超音波診断がよりたやすくなることもあると考えられた.