Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
消化器:肝・3 D

(S448)

3D法による肝病変の検討-液状部を有する病変について

3D image of hepatic lesion containing fluid areas

石田 秀明1, 小松田 智也1, 古川 佳代子1, 八木澤 仁1, 渡部 多佳子1, 長沼 裕子2, 大山 葉子3, 矢野 雅彦4, 神山 直久4, 長井 裕5

Hideaki ISHIDA1, Tomoya KOMATSUDA1, Kayoko FURUKAWA1, Hitoshi YAGISAWA1, Takako WATANABE1, Hiroko NAGANUMA2, Youko OHYAMA3, Masahiko YANO4, Naohisa KAMIYAMA4, Hiroshi NAGAI5

1秋田赤十字病院超音波センター, 2市立横手病院消化器科, 3秋田組合総合病院臨床検査科, 4東芝メディカル超音波担当, 5N.G.I.研究所

1Center of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital, 2Gastroenterology, Yokote Municipal Hospital, 3Department of Medical Laboratory, Akita Kumiai General Hospital, 4Ultrasound System Group, Toshiba Medical Systems, 5New Generation Imaging Laboratory

キーワード :

【はじめに】
近年のコンピューター技術の進歩に伴い超音波画像の立体表示(3D)が可能となりつつある.その基盤となるのは専用のプローブで等間隔の多数面情報を自動的に収得したものである.この情報全体がvolume dataである.その内部に含まれる無エコー部全体を結合させて表示する手法(内腔表示法)はcavity mode(東芝), inversion mode(GE)などと呼ばれ,腹部領域に限っても,拡張胆膵管や異常走行脈管,などの全体像の理解を容易にする表示法として注目されている.一方,超音波はその特性から,反射率の大きな境界面の表示が優れている.この点に注目し,今回我々は液状部を有する肝病変の液状部全体の内腔像を検討し若干の知見を得たので報告する.
【対象と方法】
最終診断がなされた下記の疾患に関し,息止め中に,得られたvolume dataを基にして再構築された内腔像の表面の状態を比較検討した.使用装置:東芝社製AplioXG,Aplio500,GE社製LogiqE9,Philips社製IU22xMATRIX.対象疾患は,肝嚢胞36例,液状変性を伴う肝転移17例,嚢胞線種2例,肝膿瘍12例で,最終診断は,肝嚢胞は,内部エコーを欠き,後方エコー増強効果や明瞭な前後壁を示した例の限定し,他の疾患は他の画像所見や臨床像を合わせ総合的に診断したものに限定した.なお,各疾患の内腔像は便宜的に,表面が,(a)平滑である,(b)顆粒状の凹凸がみられる,(c)大きな結節がみられる,(d)毛羽立った面を有する,(e)曲面,平面,などが複雑に混在している,と大別し,比較検討した.なおa)-e)の所見をあわせ有する場合は進行した群の所見a)+c)は(c),などとした.
【結果】
(1)肝のう胞;(a)平滑である(8/36),(b)顆粒状の凹凸がみられる(16/36),(c)大きな結節がみられる(12/36),(d)毛羽立った面を有する(0/36),e)曲面,平面,などが複雑に混在している(0/36),液状変性を伴う肝転移;(a)平滑である(0/17),(b)顆粒状の凹凸がみられる(1/17),(c)大きな結節がみられる(2/17),(d)毛羽立った面を有する(3/17),(e)曲面,平面,などが複雑に混在している(11/17),肝膿瘍;(a)平滑である(0/12),(b)顆粒状の凹凸がみられる(0/12),(c)大きな結節がみられる(0/12),(d)毛羽立った面を有する(4/12),(e)曲面,平面,などが複雑に混在している(8/12),で,嚢胞線種はともに(c)であった.
【まとめと考察】
volume dataの活用は今後の超音波診断の大きな柱である.なかでも,無エコー部全体を結合させて表示する手法(内腔表示法)は今後多用されると期待されている.今回の検討でも,従来,嚢胞の所見として,a)無エコーな内部,b)増強される後方エコー,と並んで,c)円形であること,が強調されてきた.このため,嚢胞全体はほぼ球形であると考えられ易いが実際にはかなり表面に顆粒や結節状の凹凸が見られることが分かった.しかし,膿瘍や液状変性を伴う肝転移で見られたような,毛羽立った面はなく,曲面,平面,などが複雑に混在している事もなく,この点がのう胞とこれらの疾患の鑑別点になりえると思われた.今後内腔表示法により疾患をより深く検討できると期待される.