塩澤 克彦¹, 小川 眞広¹, 三浦 隆生¹, 阿部 真久¹, 松本 直樹¹, 中河原 浩史¹, 山本 敏樹¹, 森山 光彦¹, 石田 秀明², 加茂 知久³

Katsuhiko SHIOZAWA¹, Masahiro OGAWA¹, Takao MIURA¹, Masahisa ABE¹, Naoki MATSUMOTO¹, Hiroshi NAKAGAWARA¹, Toshiki YAMAMOTO¹, Mitsuhiko MORIYAMA¹, Hideaki ISHIDA², Tomohisa KAMO³

¹駿河台日本大学病院内科, ²秋田赤十字病院超音波センター, ³駿河台日本大学病院外科

¹Gastroenterology and Hepatology, Nihon university school of medicine, ²Center of Diagnostic Ultrasound, Akita red cross hospital, ³Department of Surgery, Nihon university of medicine

キーワード :

【目的】
近年超音波診断装置の改良に伴いより高い分解能で画像解析を行うことが可能になった．その反面,拡大像も使用することが多くなり時として区域分類がわかりにくいこともある．肝臓に対する超音波検査は,門脈が最も描出されるためCouinaudの分類を用いて表記がなされているが,この血流支配からみた正確な区域分類は他の画像診断との比較において共通の認識を持つために重要であり,また血行支配は肝癌治療において手術や経動脈的な治療を行う上での治療シミュレーションとして有用となる．つまり肝臓の区域分類は,解剖学的基本事項として診断,報告書の作成,治療,治療支援に関するすべての面において必須事項となっているため,正確な情報を得ることは超音波検査にとっても有用となる．近年診断装置の進歩や画像解析ソフトの改良もめざましく,造影CT検査の画像から肝区域分類の自動抽出できるソフトも登場している．そこで今回我々は,磁気センサーを用いた造影CT検査との統合画像による超音波検査を施行する際に肝区域を自動抽出した画像をreference画像として取り込みその有用性が示唆されたので報告をする．
【対象と方法】
対象は肝細胞癌の診断・治療に際してほぼ同時期に造影CT検査と超音波検査を施行した症例とした．使用装置は,東芝メディカルシステムズ社製Aquilion 64 CX,ザイオソフト株式会社製ziostation2, GEヘルスケア社製LOGIQE9, S8である．造影CT（門脈造影下CT画像を含む）検査施行後,検査データをワークステーションへ移行し画像解析ソフトを用い肝臓および門脈の自動抽出を行う．肝実質の自動抽出は2つボリュームデータから濃度差,エッジ情報などをもとに肝臓実質を特定し抽出する．その後門脈の自動抽出を肝臓の中にある連続性のある脈管構造を自動認識し,肝区域分割を脈枝の構造情報を使用し指定した枝のマスクと残りの枝のマスクをリージョングローイング法をもとにした計算法により空間的な中間点を割出し抽出した．その後マスク情報をCTのスライスデータ（16bit DICOM Data）として新たに保存・出力し超音波検査のreference画像として用いた．
【結果】
CT画像を通常の画像と門脈枝や肝区域のごとの画像を取り入れ色分けを行い重ね合わせ画像を行うことでreferenceのCT画像が肝区域分類を行った画像として表示可能となった．本画像を使用することで門脈が描出されない画像でも常に門脈支配域が把握可能で治療シミュレーションとして非常に有用であることが有用であるこが確認された．また,腫瘍内の血流分布の割合も表示されることより術前イメージとしても重要であり,磁気センサーのGPS機能を利用することで術中エコーにも反映することが可能であった．しかし,現在5種類の画像のみ選択できず肝象の8区域をすべて色分けして表示することはできず,選択可能な画像の枚数を増やす必要があると考えられた．
【考察】
高度な医療に際し,高分解能の観察を可能にする超音波検査は有用であり,門脈支配領域をreferenceとすることで視野が狭くなる欠点を是正し客観性を飛躍的に向上させ有用であることが確認された．本システムとの統合は関心領域の体積計算なども可能であり,治療計画,術中超音波検査や穿刺治療などの治療支援,他画像比較において極めて有用であると考えられた．
【結論】
門脈血流表示をreferenceとした超音波検査は,肝癌治療において有用であることが示唆された．