石田 秀明¹, 小松田 智也¹, 古川 佳代子¹, 八木澤 仁¹, 石井 透¹, 大野 秀雄¹, 大山 葉子², 長沼 裕子³, 大野 長行⁴, 立石 健太郎⁴

Hideaki ISHIDA¹, Tomoya KOMATSUDA¹, Kayoko FURUKAWA¹, Hitoshi YAGISAWA¹, Toru ISHII¹, Hideo OHNO¹, Yoko OHYAMA², Hiroko NAGANUMA³, Nagayuki OHNO⁴, Kentaro TATEISHI⁴

¹秋田赤十字病院消化器科, ²秋田組合病院臨床検査科, ³市立横手病院消化器科, ⁴GE横河メディカルシステム株式会社超音波担当

¹Gastroenterology, Akita Red Cross Hospital, ²Department of Medical Laboratory, Akita Kumiai General Hospital, ³Gastroenterology, Yokote Municipal Hospital, ⁴Ultrasound System Group, GE-Healthcare

キーワード :

【はじめに】
我々はすでに,携帯超音波（V scan,GE Health Care,以下Vsc）が救急や在宅の現場,外来診療に極めて有用である,と報告した．今回はVscの新しい活用法としてもベッドサイドでの利用を報告する．
【対象と方法】
1:造影超音波のノイズ（アーチファクト）に関する検討;イ）造影超音波に起因するノイズの有無を,10例で（直後7例,翌日3例）を対象に,ハイエンド装置（東芝社製:AplioXG, GE社LogiqE9）とVscで比較した．検討項目は,1）Bモード:（朝もや様）ノイズ,2）カラードプラ:a）門脈の火炎状所見,b）肝実質内のカラーノイズ,である．ロ）造影超音波検査を受け,翌日と翌々日にベッドサイドでVsc検査を受けた20例を対象に上記のノイズ,の有無,を検討した．2:病変処置の効果判定に関する検討;肝膿瘍に対する超音波下経皮経肝ドレナージ（4例）,神経因性膀胱に対するフォーレ挿入（3例）,に対し処置の効果判定を翌日ベッドサイドでVscを用い行った．
【結果】
1:造影超音波のノイズ（アーチファクト）に関する検討;イ）10例全例で両者間に所見の有無の差異は無かった．がVscの所見が常に軽微であった．ロ）翌日:朝もや（4/20（+）,16/20（-））,火炎（6/20（+）,14/20（-））,カラーノイズ（13/20（+）,7/20（-））．翌々日:朝もや（1/20（+）19/20（-））,火炎（2/20（+）,18/20（-））,カラーノイズ（9/20（+）,11/20（-））．2:病変処置の効果判定に関する検討：肝膿瘍に対する超音波下経皮経肝ドレナージ（1/4）,神経因性膀胱に対するフォーレ挿入（0/3）,で所見に差異を認めず,処置追加をした．
【まとめと考察】
390gポケットサイズの携帯超音波装置V scan（Vsc）は手のひら内の科学の目としてその活用効果が期待されている．我々はVscの活用として,すぐに想定される救急医療の一翼のみならず,外来診療における新患の迅速なふるい分け,などの機動力向上のツールとしての意味などを報告してきた．今回はVscの活用範囲を拡大させる目的で,大型装置では現実的に困難なベッドサイドでの気軽な利用として超音波造影剤の肝内残留期間の検討を行った．この結果,ハイエンド装置に比して感度が劣るVscでも検査日翌日まで造影剤がわずかに残ることが確認され術中超音波検査を予定する場合,手術前日の造影超音波検査は控えたほうがいいことが分かった．従来の装置では,装置がある大きさがあるため,a）装置を何回もベッドサイドまで運ぶことは非現実的であり,また,b）患者をベッドごと検査室まで移動させることも,患者の安静や看護士の負担を考えると非現実的である．このように効果がある程度想定されながらも具体的に行えなかった超音波の活用がVscで可能となると思われ報告する．今後Vscの携帯性を生かしたベッドサイドでの活用が多数期待される．