Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
消化器:その他2

(S443)

腹壁診断における高周波3D dataの活用

US diagnosis of abdominal wall by using high-frequency 3D data.

大山 葉子1, 石田 秀明2, 長沼 裕子3, 小松田 智也2, 古川 佳代子2, 渡部 多佳子2, 三浦 百子1, 高橋 律子1, 草皆 千春1, 矢野 雅彦4

Yoko OHYAMA1, Hideaki ISHIDA2, Hiroko NAGANUMA3, Tomoya KOMATSUDA2, Kayoko FURUKAWA2, Takako WATANABE2, Momoko MIURA1, Ristuko TAKAHASHI1, Chiharu KUSAKAI1, Masahiko YANO4

1秋田組合総合病院臨床検査科, 2秋田赤十字病院超音波センター, 3市立横手病院内科, 4東芝メディカルシステム株式会社超音波担当

1Medical Laboratory, Akira Kumiai General Hospital, 2Center of Ultrasound, Akita Red Cross Hospital, 3Internal Medicine, Yokote Municipal Hospital, 4Ultrasound System Group, Toshiba Medical Systems Corporation

キーワード :

【はじめに】
近年のコンピューター技術の進歩に伴いvolume dataを利用した超音波診断が腹部領域でも可能となりつつある.我々はすでに日本超音波医学会総会で数回にわたり腹部超音波診断における3D診断,特にそのmulti planeの有用性,を報告した.しかし,これらの対象は腹腔内臓器に限られ腹壁に関しては装置の特性から検討しなかった.今回我々は通常乳腺の3D診断に用いられる高周波3Dプローブ(12-18MHz,焦点距離約2cm)を用い腹壁を下記のように検討し若干の知見を得たので報告する.
【使用診断装置】
東芝社Aplio XG, Aplio500, (中心周波数:3-4MHz).
【Data収得とvolume dataの活用】
3Dプローブを自動的に作動させ収得されたvolume dataを基に,多数の断面が機械的に再構築可能となる.表示断面はモニター上に,現在観察断面(A-plane),それを時計軸に90度プローブを回転させた断面の)B-plane,そして,(一般の3D表示法のZ軸にあたる)C-plane,およびそれらに平行の多数面(multi-plane)の自動表示が可能である.さらに,volume data内に含まれる無エコー部全体を結合させて表示する手法(cavity mode)による側副血行路の走行の表示能についても検討した.なお今回の検討はBモードを中心におこなった.これはBモードの場合volume data収得に数秒程度要するが,カラードプラの場合は,その3-4倍時間を要しさらにmotion artifactなどの影響を受け易いためである.
【対象と方法】
1)正常腹壁10例に関し,そのA,B,C断層面の鮮明度を通常のmedium focus(3-4MHz, 5cm近傍)3Dプローブで得られた像と高周波3Dプローブで得られたものを比較した.2)正常腹壁10例に関し,高周波3Dプローブを用いそのABC断層面の鮮明度を,深さ2cm, 3cm , 4 cm,で比較した.なお鮮明度は,(a)鮮明,(b)やや不鮮明であるが観察可能,(c)不鮮明で観察不可能,の3段階とした.3)疾患のA,B,C 各planeを作成し疾患径が最大に表現される断面を検討した.疾患は,脂肪腫6例,のう胞4例,血管腫3例,転移3例,神経線維腫2例,の18例である.4)傍臍静脈3例(全てアルコール性肝硬変に伴う)と下大静脈閉塞(Primary Budd-Chiari症候群1例,原因不明1例)に関しcavity modeを基に走行を比較した.
【結果】
1)10例全例で全ての断面で高周波3Dプローブがmedium focus3Dプローブを上回った.2)深さ2cm:A-plane(a)10/10,(b)(c)0/10, B-plan(a)4/10,(b)6/10,(c)0/10,C-plane(a)6/10,(b)4/10,(c)0/10.3cm:A-plane(a)8/10,(b)2/10,(c)0/10, B-plane(a)3/10,(b)6/10,(c)1/10, C-plane(a)5/10,(b)4/10,(c)1/10.4cm:A-plane (a)3/10,(b)4/10,(c)3/10, B-plane(a)2/10,(b)3/10,(c)5/10, C-plane(a)3/10,(b)4/10,(c)3/10であった.3)のう胞,転移,神経線維腫では断面による径に差異は無く,脂肪腫と血管腫ではC>A>Bであった.4)傍臍静脈は肝左葉から前方に伸展した脈管がほぼ尾側に直進,下大静脈閉塞例では脈管は全経路で蛇行していた.
【まとめと考察】
腹腔内と異なり腹壁は呼吸性移動がないため,volume dataを収得するには適した箇所と思われる.しかし浅部にあるため対応したプローブ(高周波)が必要である.これにより腫瘤では横への伸展度が理解でき,側副血行路では走行の全体像が理解可能になり診断の信頼度が向上すると思われる.