Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
消化器:その他2

(S442)

出産後の若年女性に発症した後腹膜脂肪肉腫の一例

A case of huge retroperitoneal liposarcoma detected in a woman after childbirth

千葉 三保1, 中田 悠紀1, 前田 晃作1, 内藤 雅文1, 道田 知樹1, 伊藤 敏文1, 笠島 裕明2, 山崎 芳郎2, 吉田 康之3, 春日井 務3

Miho CHIBA1, Yuki NAKADA1, Kousaku MAEDA1, Masahumi NAITOU1, Tomoki MICHIDA1, Toshihumi ITO1, Hiroaki KASASHIMA2, Yoshio YAMAZAKI2, Yasuyuki YOSHIDA3, Tsutomu KASUGAI3

1大阪厚生年金病院消化器内科, 2大阪厚生年金病院外科, 3大阪厚生年金病院病理科

1gastroenterology, Osaka Kouseinenkin Hospital, 2surgery, Osaka Kouseinenkin Hospital, 3pathology, Osaka Kouseinenkin Hospital

キーワード :

【症例】
30代,女性
【主訴】
腹部膨隆,呼吸困難感
【現病歴】
2011年1月に第1子出産,産後3ヶ月頃から下腹部膨隆を自覚していたが,産後の影響もしくは,便秘によるものと自己判断し放置.6月に産婦人科受診し経膣走査での超音波検査を施行されたが,特に異常は指摘されなかった.夏頃から腹部全体が膨隆,呼吸困難感が生じたため2011年9月当院内科受診となった.
【既往歴】
特記事項なし
【経過】
来院時,腹部全体が妊娠後期のように膨隆していた.血液検査では炎症反応の上昇や貧血を認めず,腎機能は正常で,CEA,CA19-9,CA15-3,CA125,IL-2Rなどの腫瘍マーカーは全て正常範囲内であった.腹部超音波検査では,hyperechoicな腫瘤がほぼ腹部全体にみられ,腫瘍内部にはhypoechoicな索状構造がみられた.肝は上方へ圧排され,左側腹部でのみ腸管ガスが確認された.腹水や妊娠を示唆する胎盤や児頭を認めなかった.腹部レントゲンでも,腸管ガス像は左腹部に限局し,腹部dynamic CTでは腹部〜骨盤内に25cm×38cmの巨大腫瘤が確認された.腫瘍腹側と右背側は異なる所見を呈し,腫瘍腹側は軟部組織が多く含まれ,腫瘍右背側では脂肪が多く含まれていた.いずれも造影効果はかなり乏しかった.MRIでは腫瘍腹側で,T1低信号,T2はやや低信号と高信号を示す部分が混在しており,造影効果は不均一で乏しかった.腫瘍右背側では腹側に比べてさらに造影効果に乏しかった.腫瘍腹側,右背側とも脂肪抑制画像で信号の低下が明瞭であった.腫瘍腹側を中心にソナゾイド造影超音波検査を施行すると,ソナゾイド静注約12秒後より,肝,腎に比べてhypovascularであるものの,脂肪含有の多いと考えられるhyperechoic な部位に弱い血流があることが確認された.ソナゾイド造影超音波検査では,腫瘍前方と腫瘍右背側では造影効果の差は明らかでなかった.右腎は正中へ圧排され,腸管はすべて左方に強く圧排されていることから後腹膜由来の腫瘍と考えられた.悪性リンパ腫,脂肪肉腫,平滑筋肉腫,線維肉腫が鑑別疾患として挙げられたが,脂肪成分が多く含まれることから,後腹膜脂肪肉腫が最も疑われた.来院から20日後,当院外科にて腫瘍摘出術,右腎・副腎切除術が施行された.摘出された腫瘍は43×40cm,7200gで,病理診断はLiposarcoma,well differentiated typeであった.後腹膜脂肪肉腫は臨床症状に乏しく,発見時にはすでに巨大な腫瘤を呈していることが多いが,産後であったことも受診時期が遅くなった一因と考えられる.産後の若年女性に発症した巨大な後腹膜脂肪肉腫の1例を経験したので,若干の文献的考察を加えて報告する.