小野寺 美緒¹, 黒田 英克¹, 馬場 誠朗², 三上 有里子¹, 神山 直久³, 佐々木 章², 若林 剛², 滝川 康裕¹, 鈴木 一幸¹

Mio ONODERA¹, Hidekatsu KURODA¹, Shigeaki BABA², Yuriko MIKAMI¹, Naohisa KAMIYAMA³, Akira SASAKI², Go WAKABAYASHI², Yasuhiro TAKIKAWA¹, Kazuyuki SUZUKI¹

¹岩手医科大学消化器・肝臓内科, ²岩手医科大学外科学講座, ³東芝メディカルシステムズ超音波開発部

¹Division of gastroenterology and hepatology, Iwate Medical University, ²Department of Surgery, Iwate Medical University, ³Ultrasound Systems Division, Toshiba Medical Systems Corporation

キーワード :

【背景】
高度肥満例ではNAFLDの合併頻度が高いことが報告されているが,脂肪により適切な超音波検査が施行困難な例がある．これまで我々は,ASQ法が脂肪による肝実質の微細な変化を客観的で定量的に診断し,NAFLDの肝組織性状診断に有用と報告してきた．そこで肥満手術を施行した高度肥満症合併脂肪肝例を対象に,脂肪肝の経過観察におけるASQ法の有用性について検討した．
【対象・方法】
対象は2009年8月から当院で腹腔鏡下袖状胃切除術を施行した高度肥満症合併脂肪肝例8例．男性6例,女性2例,平均年齢29.2歳．平均BMI43.7．使用機種はAplio XG （東芝）．探触子は375BT（中心3.75MHz）．ASQ-modeで肝実質超音波断面像を記録し,取得したRAW dataをPCに転送し保存．FD-Ratioは10回測定し平均値を測定結果とした．術前から術後6カ月間毎に,血液検査,ASQ法,CT検査を施行し,体重,肝機能,FD-Ratio,CT値 （L/S-Ratio） ならびに脂肪量の変化を検討した．
【結果】
観察期間の中央値は225日．術前の肝病理所見は全例単純性脂肪肝で炎症や繊維化は認めず脂肪沈着は30-60％程度であった．術前の平均体重は129.5±26.1kgで,術後6カ月で28.3±11.6kg,12カ月で36.6±14.9kgの体重減少を認めた．内臓脂肪は263.7±20.3 cm²から205.5±21.7 cm²に,皮下脂肪は658.1±72.4 cm²から583.5±13.7 cm²に低下していた．B-modeでは肝実質エコーレベルの若干の低下を認めたが,主観的評価手法であった．FD-Ratioは全例測定可能で術前0.018±0.008から術後6カ月で0.102±0.056に有意な上昇を認めた（P＜0.01）．L/S-Ratioは術後6カ月で0.86±0.3から1.06±0.9に有意な上昇を認め（P＜0.01）,FD-Ratioとパラレルな変化を示した．
【結語】
肥満手術を施行した高度肥満症合併脂肪肝は,短期間でダイナミックな体重減量と脂肪肝の改善を認めた．ASQ法は,定量的でCT値ともパラレルな変化を示し,高度肥満症も含めた脂肪肝の経過観察に有用と考えられた．