Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
消化器:肝・その他1

(S438)

脂肪肝におけるASQと局所不均一性パラメータ(F-D ratio)の有用性の検討

Usefulness of the Acoustic Structure Quantification(ASQ) and Focal disturbance ratio(F-D ratio) in fatty liver

伝法 秀幸1, 斎藤 聡2, 窪田 幸一1, 宇賀神 陽子1, 竹内 和男3

Hideyuki DENPO1, Satoshi SAITOH2, Koichi KUBOTA1, Yoko UGAJIN1, Kazuo TAKEUCHI3

1虎の門病院分院臨床検査部, 2虎の門病院肝臓センター, 3虎の門病院消化器科

1Department of Clinical Laboratory, Toranomon Hospital Kajigaya, 2Department of Hepatology, Toranomon Hospital, 3Department of Gastroenterology, Toranomon Hospital

キーワード :

【はじめに】
Acoustic Structure Quantification(以下ASQ)は,肝内部エコーの“粗さ”を定量化する手法である.ASQモードでは各種画像補正を無効とした状態で肝実質のスペックルパターンを統計処理し,粗さの指標Cm2で算出し定量評価する.これは肝実質が均一なスペックルパターンであれば分散はレイリー分布に従い,粗いとそこから逸脱しCm2が変化するという原理に基づいている.ASQ Ver.5では新たに,局所不均一性パラメータ(Focal disturbance ratio,以下F-D ratio)が追加された.これはグラフに表示される赤のラインと青のラインの面積比であり,ROIよりCm2を算出後,分散が一定以下のサンプルのみを使用し再度Cm2を計算し算出する.このためF-D ratioは脈管壁や線維化など背景肝実質エコーより著しく逸脱した信号があると高値になるとされている.
【目的】
ASQ ver.5を使用しCm2 mode値に加え,新たなパラメータであるF-D ratioを用いて脂肪肝におけるASQの有用性を検討した.
【対象と方法】
当院にて腹部超音波検査を施行しASQ解析をした266例.年齢:23歳〜95歳(中央値65歳),男女比153:113,内訳は脂肪肝123例,正常肝143例.除外項目としてHBs抗原陽性,HCV抗体陽性,血小板低値例・ALT100 IU/L以上の症例,脂肪化を伴う慢性肝障害症例は除外した.使用機器は東芝製 Aplio XG,使用プローブはコンベックスプローブPVT-375BT.撮影条件は右肋間走査,深度:8cm,フォーカス:4cm,ダイナミックレンジ:50,ゲイン:80,ASQモードで息止めにて記録した.計測はフォーカス付近に血管等の構造物を避けてROIを3ヶ所設定し,Cm2mode値およびF-D ratioにて解析を行い,①正常肝と脂肪肝の比較,②脂肪肝を軽度・中等度・高度に分類し程度別に比較検討した.
【結果】
[①正常肝と脂肪肝の比較] ASQmode値(中央値)は,正常肝108:脂肪肝95であった.F-D ratio(中央値)は,正常肝0.23:脂肪肝0.04であり,いずれも脂肪肝は有意に低値となった(P<0.05).AUROCはASQmode値で0.82,F-D ratioでは0.90であり,カットオフ/感度/特異度/陽性的中率はそれぞれ,ASQmode値:98/65%/80%/75%,F-D ratio:0.12/85%/80%/74%となり,特にF-D ratioでは良好な結果となった.
[②脂肪肝の程度別比較]ASQmode値(中央値):正常肝/軽度脂肪肝/中等度脂肪肝/高度脂肪肝は108/96/93/94であり,正常肝と軽度脂肪肝で有意差を認めた(P<0.05),しかし脂肪肝の程度が進行しても,ASQmode値にあまり変化はなく,脂肪肝の程度別では有意差を認めなかった.F-D ratio(中央値):正常肝/軽度脂肪肝/中等度脂肪肝/高度脂肪肝は0.22/0.07/0.04/0.02であった.正常肝と軽度脂肪肝に有意差を認め,さらに高度脂肪肝は軽度・中等度脂肪肝に比し有意に低値となった(P<0.05).
【まとめ】
ASQ,特にF-D ratioは正常肝に比べ 脂肪肝で低値となり,脂肪肝診断での有用性および脂肪の定量化への可能性が示唆された.