Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
消化器:肝・その他1

(S438)

肝癌高危険群の囲い込みを目的とした超音波検査の試み

The trial of the ultrasonics aiming at enclosure of hepatocellular carcinoma high-risk group

川端 聡1, 田上 展子1, 尾羽根 範員1, 米澤 麻子1, 仙崎 菜々恵1, 森 亘平1, 植野 珠奈1, 西村 重彦2, 山田 晃3

Satoshi KAWABATA1, Nobuko TAGAMI1, Norikazu OBANE1, Asako YONEZAWA1, Nanae SENZAKI1, Kohei MORI1, Jyuna UENO1, Shigehiko NISHIMURA2, Akira YAMADA3

1住友病院診療技術部超音波技術科, 2住友病院外科, 3住友病院消化器内科

1Department of medical-examination Engineering Department ultrasonic technique, sumitomo hospital, 2Surgery, Sumitomo hospital, 3Digestive tract internal medicine, Sumitomo hospital

キーワード :

【1.はじめに】
ウイルス性肝疾患が肝癌発症の高危険群であることは広く知られている.しかしながら画像検査をどのような間隔で行うかについてはいまだ明確な基準はない.また消化器内科以外の診療科でフォロー中の患者でウイルス性肝炎の合併があった場合,画像検査が適切に行われているとは言えないケースも散見される.そこで我々は2006年1月より,ウイルス性肝炎を中心とした慢性肝炎(以下CH)患者の腹部超音波検査(以下US)歴を管理し,一定期間以上画像検査が施行されていない患者の主治医に対してUSの依頼を促す案内メールの配信を行っている.今回その管理方法の紹介とともに,CH定期フォローアップの有用性について,初発肝癌の腫瘍径と5年生存率を中心に検討したので報告する.
【2.CH定期フォローアップの方法と5年間の結果】【CH定期フォローアップ方法】
1)CH(慢性ウイルス性肝炎,肝炎ウイルスキャリアー,インターフェロン治療後ウイルス学的著効,及び一部のアルコール性肝硬変,非アルコール性脂肪性肝炎,原発性胆汁性肝硬変などを含む)にてUSが施行された例に対し,検査後,画像ファイリングシステムのコメント入力欄に「慢性肝炎」のキーワードを記入する.2)キーワードで当該患者を抽出し,データベースソフトを使用してID番号,氏名,検査日,臨床診断等のデータを集積.3)3カ月ごとにデータ解析を行い,6カ月以上USが施行されていない患者を対象に,さらに電子カルテでCT,MRIなどの画像検査も施行されていない患者を抽出する.(その際,死亡,転院,終診,次回予約取得済み患者を除く)4)当該患者の主治医へメール連絡し,次回受診時にUS予約を促す.
【CH定期フォローアップ5年間の結果】
約5年間の当該検査件数は7339件,うち主治医への案内メール配信を行ったのは1211件で17%が6か月以上USが施行されていなかった.案内配信を行った次のUSで肝癌が発見されたものは5件みられた.
【3.定期フォローアップの有用性についての検討】
対象:2006年1月から2011年3月までの期間に,ウイルス性肝炎を中心としたCHにてUSが施行された延べ7339件のうち初発肝癌が発見された102件.方法:対象を,f/u群(肝癌発見以前のUSが6か月以内に施行されていた57件)と,非f/u群(肝癌発見以前のUSが6か月以上前の27件と初回検査18件の計45件)に分け,その腫瘍径について検討した.さらに肝癌発見から5年以上経過した29件(f/u群18件,非f/u群11件)について5年生存率の差についても検討した.結果:初発肝癌の腫瘍径は8mm〜110mm,平均23mmであった.平均±標準偏差はf/u群16.00±5.75 mm,非f/u群29.47±21.36 mmとf/u群が有意に小さかった(p<0.0001).また15mm以下の肝癌の割合はf/u群47.4%(27/57),非f/u群15.6%(7/45)とf/u群で多く,逆に31mm以上の割合はf/u群3.5%(2/57),非f/u群35.6%(16/45)と非f/u群で多くみられた.さらに5年生存率に於いてもf/u群は72.2%(13/18)で非f/u群の54.5%(6/11)に比べて良好であった.
【4.考察】
現在,データベースソフトと電子カルテを併用することにより,ほぼ確実に6ヶ月以上USを施行していないCH患者を把握可能である.主治医への案内メール配信を行った1211件を年別にみてみると,1年目の配信が288件であったのに対して5年目の配信は160件であり,主治医へのCHに対する定期フォローの意識が浸透しつつあるものと考えられた. CH定期フォローアップの有用性についての検討では,f/u群は非f/u群に比べて有意に初発肝癌の腫瘍径が小さく,5年生存率も良好であることから,CHは6か月間隔で画像検査を行うことにより,肝癌の早期発見と発癌後の延命効果が期待できると考えられた.