Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
消化器:胆道1

(S437)

体外式腹部超音波は発症早期のIBD関連原発性硬化性胆管炎の確定診断に有用である

Sonographic usefullness in early diagnosis of the IBD associated primary sclerosing cholangitis

青松 友槻1, 余田 篤1, 井上 敬介1, 鹿毛 政義2, 玉井 浩1

Tomoki AOMATSU1, Atsushi YODEN1, Keisuke INOUE1, Masayoshi KAGE2, Hiroshi TAMAI1

1大阪医科大学泌尿生殖発達医学講座小児科, 2久留米大学病理学

1Pediatrics, Osaka Medical College, 2Diagnostic pathology, Kurume university

キーワード :

原発性硬化性胆管炎(PSC)は原因不明の胆管炎により,胆汁うっ滯をきたし,肝硬変となり,高率に肝移植を必要とする難治性の自己免疫疾患として知られている.また,炎症性腸疾患(IBD),特に潰瘍性大腸炎(UC)の合併症としてPSCが知られている.一方,発症早期の小児のPSCでは,臨床像や内視鏡下逆行性胆管造影(ERC)所見が軽微かみられないことが多い.肝臓と胆管関連の症状がほとんどみられない発症早期に,超音波所見からIBD 関連PSCが示唆され,肝生験と下部消化管内視鏡(CS)で確定診断しえた小児の4例の超音波像を報告する.発症年齢は10歳-15歳(男/女,1/3)で,主訴は腹痛が2例,発熱が1例,血便が2例.IBDの内訳はUC3例,クローン病(CD)1例.全例黄疸などの胆汁うっ滯症状はみられず,超音波所見と軽度のAST,ALT,LAP,γGTPの上昇があり,肝生験を施行し,onion skin lesionが認められ,PSCと診断し得た.特徴的な超音波所見として,①肝外胆管の管状の拡張,②肝外胆管壁の肥厚,③肝門部リンパ節の腫脹,④大腸腸管壁の肥厚,⑤腹腔内腸間膜リンパ節の腫脹が全例で観察された.①の肝外胆管の直径は8.9-11.9mmと管状に拡張していた.肝内胆管の拡張は認めないものから,軽微な拡張がみられる例まで様々であった.②の肝外胆管壁は1.4-1.9mmと肥厚し層構造が明瞭に観察された.小児領域では肝外胆管壁の肥厚は稀で,しかも肝外胆管壁の性状に関しては,凹凸はほとんどなく,スムーズであった.③の肝門部リンパ節は肝疾患でしばしばみられ,PSCに特異的な所見ではないが,全例で球形に多数が腫脹し,個々のリンパ節の直径は6.2-13.8mmであった.④の大腸腸管壁は比較的5層構造が保たれていて,第3層の粘膜下層の肥厚が目立ち,壁厚は2.2-3.3mmと軽度の肥厚であった.PSCに関連したIBDでは消化管症状が軽微なことが知られている.⑤の腹腔内腸間膜リンパ節は肝門部リンパ節と同様に球形に腫脹し,個々のリンパ節の直径は4-7mmであり,IBDでしばしば観察されることが多い.PSCではMayo Clinicの診断基準(2003)が知られているが,小児期発症PSCではMRCPやERCでの胆道病変が軽微であることが知られていて,MRCPの診断感度は低い.自験例の4例でもERCの壁不整は軽微で,数珠様変化は認めていない.しかし,肝組織所見では門脈域の繊維性変化があり,典型的なonion skin lesionが全例でみられた.体外式超音波検査で上記の①から⑤の所見が全例で観察された.④と⑤の所見はIBDでしばしばみられる所見であるが,①と②の所見は比較的頻度の稀な所見であり,④と⑤の所見に①②③の所見が合わせて観察されれば,IBD関連PSCが強く示唆される所見と推測される.控えめに評価しても,これらの超音波所見から侵襲性のある肝生験とERC検査を強く示唆する所見が得られた.管外胆管の壁肥厚を伴う管状の拡張,肝門部リンパ節腫大,肝外病変としての大腸腸管壁の肥厚はIBD関連PSCの特徴的な超音波所見で,発症早期から観察され,有用な超音波所見といえる.