Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
消化器:肝・Elastography 3

(S433)

Elastographyを用いた肝線維化評価の新たな試み

New trial for evaluation of liver fibrosis using Elastography

桑代 卓也1, 小野 尚文1, 水田 敏彦2

Takuya KUWASHIRO1, Naofumi ONO1, Toshihiko MUZUTA2

1江口病院内科, 2佐賀大学医学部内科

1Department of Internal Medicine, Eguchi Hospital, 2Department of Internal Medicine, Saga Medical School

キーワード :

【はじめに】
慢性肝疾患において,肝組織の病理学的評価が優れた検査法であることは周知の事実であるが,経皮的肝生検は,時に重篤な合併症を伴う.より安全に肝線維化を評価する代替方法として,これまでfibroscanやVTTQ(Virtual-Touch Tissue Quantification)が臨床で行われるようになってきた.しかしながら,これらの測定には特殊で高価な装置が必要となり,一般臨床現場に広く浸透しているとは言い難い.Elastographyは,乳がんや甲状腺疾患の診断に有用な検査法として浸透し,最近では肝疾患にも応用されるようになってきた.今回我々は,Elastographyの搭載された装置で,肝線維化(肝硬度)の評価が可能かを試みた.
【対象と方法】
慢性肝炎7例(B型慢性肝炎2例,C型慢性肝炎5例)肝硬変2例,健常者5例を対象とした.使用した装置は,LOGIQ-S8(GEヘルスケア)でコンベックス型プローブ(C1-5)を使用し,Elastography(revised direct strain法)を行った.測定は,患者を仰臥位にて息止めさせた状態で,右肋間走査で肝臓および右腎臓を同時に描出し,それぞれの数値(硬度)を測定して,肝腎硬度比で評価した.肝腎硬度比の値で,健常肝と慢性肝炎,肝硬変の判別が可能であるかどうかを検討した.
【結果】
肝腎硬度比は,健常患者(N=5)の平均が0.24,慢性肝炎患者(N=7)の平均が0.25,肝硬変患者(N=2)の平均が0.75であった.症例数が少ないこともあり,健常肝と慢性肝炎では統計学的な有意差はみられなかったものの,線維化Stageが進行するに伴い,肝硬度比が高くなる傾向を得ることができた.また,肝硬変については,2例と症例が少なかったが,明らかに肝硬度比の上昇をみることができた.
【考察および結語】
我々は最初にElastographyの搭載された装置を用いて肝硬度測定を試みてみたが,fibroscanやVTTQと異なり,加える力が一定でなく評価は困難であった.また,心拍動をりようしても部位によるばらつきが大きかった.そこで,比較的硬度の安定している腎を同時描出し,肝腎硬度比から肝線維化の評価が可能か試みてみた.今回の結果から,症例数は少ないものの,肝線維化評価において有効性が示唆された.再現性や装置の条件設定の問題もあるが,簡便に行える方法であり,さらに症例を積み重ねて検討を行っていきたい.