大野 香織^{1, 3}, 吉田 昌弘¹, 田中 弘教^{1, 2}, 柴田 陽子¹, 東浦 晶子¹, 橋本 眞里子¹, 豊倉 恵理子³, 坪内 博仁³, 西口 修平², 飯島 尋子^{1, 2}

Kaori OHNO^{1, 3}, Masahiro YOSHIDA¹, Hironori TANAKA^{1, 2}, Yoko SIBATA¹, Akiko HIGASIURA¹, Mariko HASHIMOTO¹, Eriko TOYOKURA³, Hirohito TUBOUCHI³, Syuhei NISHIGUCHI², Hiroko IIJIMA^{1, 2}

¹兵庫医科大学病院超音波センター, ²兵庫医科大学内科・肝胆膵科, ³鹿児島大学大学院　消化器疾患・生活習慣病学消化器内科

¹Department of Ultrasound Imaging Center, Hyogo College of Medicine, ²Department of Internal Medicine, Division of Hepatobiliary and Pancreatic Disease, Hyogo College of Medicine, ³Digestive Disease and Life-style Related Disease, Kagoshima University Graduate School of Medical and Dental Sciences

キーワード :

【目的】
肝臓の硬さを診断する,超音波弾性イメージング法は,現在FibroScan,Elastography,Virtual Touch Tissue Quantification （VTTQ）などがあり非侵襲的肝線維化診断として臨床に応用されている．私たちはこれまでVTTQによる肝線維化診断や肝腫瘍性状診断について報告してきた．今回,新たに,Shear Wave Elastography （SWE）による腫瘍性病変の硬さ測定の機会を得たので,代表的な肝腫瘍性病変である肝細胞癌,肝血管腫,転移性肝癌の硬さをVTTQとSWEにて測定し,その臨床的意義について検討した．
【方法】
2009年10月から2011年9月までの間に当院でVTTQ法を施行した102例（男性　60例,女性42例　年齢 51歳〜77歳　平均年齢 64歳）の肝腫瘍性病変102結節（肝細胞癌 49結節,肝血管腫 28結節,転移性肝腫瘍 25結節）を対象とした．せん断性波速度（Vs値）は,ACUSON S2000（VTTQ：持田シーメンス社）のとAixplorer（SWE：SuperSonic Imagine社）を使用し,腫瘍部および腫瘍近傍の非腫瘍部の測定を行った．VTTQの測定は腫瘍部および腫瘍近傍の非腫瘍部に2×1cmのROIを設定,3〜5回測定し,平均値より求めた．SWEの測定は腫瘍部および非腫瘍部とも,約3〜6秒後カラーが安定した部位にSWE Boxを設定し,カラーが均一な部分にROIを設定し平均値を求めた．本検討は院内倫理委員会の承諾を得ている．
【結果】
VTTQ法における腫瘍部と非腫瘍部のVs値（m/s）はそれぞれ肝細胞癌：1.69±0.59,1.93±0.82,肝血管腫：1.57±0.82,1.13±0.20,転移性肝腫瘍：2.81±0.81,1.15±0.16,であり,転移性肝腫瘍のVs値は肝細胞癌や肝血管腫と比較して有意に高値であった（P＜0.001）．Vs値が2.1以上では,84％が転移性肝腫瘍であり鑑別に有用であった．VTTQとSWE法を比較できた症例では,肝細胞癌では腫瘍部と非腫瘍部のVs値（m/s）はVTTQ：1.79,1.22・SWE 3.53,1.22,肝血管腫では腫瘍部と非腫瘍部のVs値（m/s）はVTTQ：1.34,1.05・SWE：2.06,1.34,転移性肝腫瘍では腫瘍部と非腫瘍部のVs値（m/s）はVTTQ：2.51,1.10・SWE：4.15,1.36であり,非腫瘍部はほぼ同じ値であるのに対し,腫瘍部のVs値についてはSWEがVTTQよりも高い傾向にあった．また,SWE法の,肝細胞癌,肝血管腫,転移性肝腫瘍の腫瘍部Vs値のなかではVTTQと同様,転移性肝癌のVs値が最も高値であった．SWEは症例数が少なく今後症例を重ね検討の必要がある．
【結語】
VTTQ法・SWE法などShear Wave を用いた診断法は,肝腫瘍性病変の鑑別において有用である．