Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
消化器:肝・Elastography 2

(S430)

日本人の正常肝におけるフィブロスキャンを用いた肝硬度の測定方法と測定値の検討

Liver Stiffness Measurement of Japanese Normal Liver using Fibroscan

伝法 秀幸1, 斎藤 聡2, 窪田 幸一1, 宇賀神 陽子1, 竹内 和男3

Hideyuki DENPO1, Satoshi SAITOH2, Koichi KUBOTA1, Yoko UGAJIN1, Kazuo TAKEUCHI3

1虎の門病院分院臨床検査部, 2虎の門病院肝臓センター, 3虎の門病院消化器科

1Department of Clinical Laboratory, Toranomon Hospital Kajigaya, 2Department of Hepatology, Toranomon Hospital, 3Department of Gastroenterology, Toranomon Hospital

キーワード :

【目的】
フィブロスキャンが平成23年10月から保険適用となった.正常肝におけるフィブロスキャン測定値の報告は海外では散見されるが,日本人を対象とした詳細な検討報告はまだ無い.今回我々は日本人正常肝におけるフィブロスキャン測定方法および肝硬度(LSM)に関して検討したので報告する.
【対象と方法】
対象は正常肝183例.年齢23歳〜95歳(中央値61歳),男女比70:113,肝疾患の既往歴,B-modeによる脂肪肝,アルコール摂取15g/日以上,BMI26以上,HBs抗原陽性,HCV抗体陽性,血小板・トランスアミナーゼおよび胆道系酵素異常値例は除外した.
[検討1]:推奨される測定方法は“仰臥位で剣状突起下端と右中腋下線の交点でプローブを肋間から肋骨に当たらないようにして,体表面に対して垂直に固定し,10回測定し中央値をLSMとする”とされているが,同一症例で条件や部位を以下のごとく変えて測定を行い影響の有無を検討した.①3名による検者間差,②体表とプローブの角度を肋骨と平行方向および垂直方向に,肋骨と垂直から角度を段階的に変えて測定(30〜60度),③同一肋間で2cm間隔で頭側から尾側まで連続測定,④中腋下線上で上下各3肋間移動での測定,⑤肝左葉での測定,⑥側臥位での測定,⑦各種呼吸下での測定.(自由呼吸,吸気・呼気息止め,深呼吸中,発声中の測定)を行いLSMへの影響を検討した(n=6).
[検討2]:推奨測定方法に則ってLSMを求め,①性別,②年齢,③BMI,④Bモードによる皮下厚(mm)で分類し,各郡のLSMを比較検討した(n=183).
【結果】
[検討1]:①検者間差ではLMS差は平均0.6kPaであった.②体表との角度(平行および垂直方向)の検討では,肋間幅により差がみられたが30度以内では差がなく,それ以上では角度が大きいほど高値となった.③同一肋間で頭尾側への移動測定では,多くは10cm移動までLSMに差が見られなかったが,小柄女性では2cmの移動でもLSMが変化した.肝下端付近では測定不能であった.④中腋下線上を挟む肋間移動では,上下各1肋間では影響は見られなかったが,2肋間目からは測定不能となる例が多かった.⑤肝左葉および⑥側臥位では測定不能であった.⑦各種呼吸下の測定では影響は見られなかった.
[検討2]:日本人正常肝161例のLSMの平均値は3.6kPa(最大値5.6kPa,75パーセンタイル 4.4kPa,25パーセンタイル 2.9kPa,最小値1.8kPaであった.①性別では男性3.6kPa,女性3.7kPa,②年齢では20歳代:4.0kPa,30歳代:3.7kPa,40歳代:3.6kPa,50歳代:3.9kPa,60歳代:3.3kPa,70歳代:3.7kPa,80歳以上:3.4kPa.③BMI別では,低体重(<18.4):3.5kPa /標準体重(18.5~ 25.0):3.5kPaで差は見られなかった.④皮下厚では15mm未満:3.7kPa,16〜20mm:3.4kPa,21〜25mm:3.0kPa,(26mm以上の症例なし)と有意差がないものの薄いほどやや高値傾向がみられた.
【まとめ】
測定部位等の検討では,肋間が狭い例では角度や部位により肋骨による測定値への影響が見られた.正常肝のLSMでは性別,年齢,BMIによる差は見られなかった.海外の報告に比して低値であった理由としては体型の違い等が考えられた.