Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
消化器:肝嚢胞・肝転移

(S429)

化学療法後の転移性肝癌における超音波像と病理組織の比較

Comparative study of ultrasound imaging and resected specimen after chemotherapy of metastatic liver cancer

水島 靖子1, 田中 正俊2, 加藤 真里1, 横山 俊朗1, 大野 美紀2, 下瀬 茂男2, 内田 信治3, 緒方 裕3, 中島 収4, 山口 倫4

Yasuko MIZUSHIMA1, Masatoshi TANAKA2, Mari KATOU1, Toshirou YOKOYAMA1, Miki OHNO2, Shigeo SHIMOSE2, Shinji UCHIDA3, Yutaka OGATA3, Osamu NAKASHIMA4, Rin YAMAGUCHI4

1久留米大学医療センター臨床検査室, 2久留米大学医療センター消化器内科, 3久留米大学医療センター外科, 4久留米大学病院臨床検査部

1Clinical Laboratory, Kurume University Medical Center, 2Department of Gastroenterology, Kurume University Medical Center, 3Surgery, Kurume University Medical Center, 4Clinical Laboratory, Kurume University Hospital

キーワード :

【はじめに】
大腸癌に対する化学療法の進歩はめざましく,大腸癌の転移性肝癌は,従来の抗がん剤と共に分子標的薬を併用することで,高い抗腫瘍効果が得られている.現在,転移性肝癌の化学療法における効果判定には,CT検査が使用されており,造影超音波検査(CEUS)の主な目的は,微小転移巣の検出である.しかし,CEUSは 空間分解能や時間分解能に優れており,腫瘍内血流の変化を捉えることで,転移性肝癌の血行動態が推測できるが,化学療法後の変化について検討した報告は少ない.今回,化学療法を導入する前後でCEUSを施行した大腸癌転移性肝癌8症例の,超音波像と病理組織とを比較した.
【対象と方法】
2009年4月から2011年11月の間,大腸癌術前または術後に転移性肝癌が確認され,化学療法前後でCEUSを施行した症例は14症例であった.そのうち2症例は,追加治療されず,4症例はラジオ波焼灼術を施行,8症例で外科的切除を施行した.切除した8症例において,化学療法後の超音波像と病理組織を比較した.
【結果】
化学療法前のCEUSは,8症例全てにring enhanceまたは腫瘍全体に染影があり,後血管相で門脈欠損を認めている.今回の検討で,化学療法後のCEUSは,4つのパターンに分類された.① 2症例は,Bモードで等〜高エコーの結節で,血管相・後血管相ともに染影はみられていない.病理組織では,ほとんど壊死で,少量の癌細胞が辺縁に残るのみであった.② 3症例は,Bモードは高エコーであった.血管相で染影がみられ,後血管相で門脈欠損を認め,化学療法前の造影パターンと同じであった.病理組織では癌細胞が腫瘍の中心まで残っていた.③ 2症例は,Bモードでは1例で高エコー,1例で低エコーとして描出された.血管相で周囲肝と同様に染影し,後血管相まで染影は続いており,造影剤のプールがみられ門脈欠損を認めなかった.病理組織では腫瘍の中心,または腫瘍の一部に壊死と細胞が混在していた. ④ 1症例は, Bモードでは辺縁に高エコー,中心には高エコーに等エコーが混在していた.血管相で辺縁はring状に染影されるが,内部はまだらに染影され,後血管相で門脈欠損を認めるも,腫瘍の一部に造影剤のプール像がみられていた.病理組織では壊死と癌細胞が蜂巣状に存在していた.
【まとめ】
Bモードでは,壊死は等エコーから高エコー,癌細胞の残存した腫瘍は高エコーが多かった.化学療法による組織の変性が加わり,反射源も変化するため,内部エコー像から壊死や癌細胞残存の鑑別は困難であった.化学療法後のCEUSの血行動態は,病理組織をよく反映していると思われた.門脈欠損がみられる腫瘍は,癌細胞の残存と壊死でみられるが,血管相の染影で癌細胞残存と壊死の鑑別が可能であった.また,化学療法後に門脈欠損を認めず,後血管相で造影剤のプールを2症例(25%)経験したが,その理由については,現在検討中である.