Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
消化器:肝嚢胞・肝転移

(S427)

被膜を有する肝嚢胞性病変における外側音響陰影の発生機序について

Lateral shadow of capsulated cystic lesion of the liver :computer analysis

宇野 篤1, 石田 秀明2

Atsushi UNO1, Hideaki ISHIDA2

1秋田県成人病医療センター消化器科, 2秋田赤十字病院超音波センター

1Department of Gastroenterology, Akita Medical Center, 2Center of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital

キーワード :

【はじめに】
我々はこれまで超音波ビームの屈折による生じる各種アーチファクトをcomputer simulationを用いて解析し,その結果を報告してきた.今回は,前回報告した嚢胞の外側音響陰影発生機序の検討をもとに,被膜を有する肝嚢胞性病変における超音波の屈折のありさまと,それにより生じる外側音響陰影の発生機序を検討したので報告する.
【基礎的検討(方法)】
1)観察対象物として肝嚢胞性病変のほかに,その後方に仮想的な膜様の構造物が等間隔に存在するものと仮定する.これは画像の歪みの出現形態および程度を検討する際の指標となる.2)肝〜肝嚢胞性病変〜仮想膜様構造物と近傍の超音波伝搬経路を計算し超音波ビームの軌跡を表示.音速は肝:1540 m/s,病変被膜部:1600 m/s,病変内部:1480 m/s とし,仮想膜様対象物においてビームの屈折反射は起こらないものとした.3)超音波伝搬経路を元に,観察対象物が実際にはどのように装置に超音波画像として表示されるか計算する.4)最後に,計算済みのビームの軌跡と装置に表示される対象物を重ね合わせて表示し像を解釈・検討した.
【基礎的検討(結果)】
1)超音波ビームは病変部の被膜外側部において屈折し側方に拡散した.一方病変部内部(中央部)を通過する多くの超音波ビームは外側部から内側に向かって収束する傾向にあり,その結果超音波ビームが存在しない領域(無ビーム域)が病変部外側部から側〜下方に広がった.2)病変部後方の仮想膜様構造物は無ビーム域を含む病変部後方の領域において偏位して表示された.3)偏位はおおむね内側の領域において下方に,被膜外側部を通過する領域において上方に生じるため,領域の境界において表示上断裂を認めた.特に被膜外側部後方においては帯状に広く高度に像の偏位が生じた.4)像の偏位・断裂の程度は病変部の後側方ほど大きかった.
【まとめ・考察】
外側音響陰影は装置が対象物を表示する際の歪みによる「断裂像」に由来する.ビームの屈折は肉眼には認識できない現象で,その屈折したビームがとらえた対象物を装置が誤った位置に表示することが偏位である.ビームの屈折が非常に大きい場合は装置が画像を表示すること自体が不可能となり断裂像が発生する.「ビームが通過しない領域」=「外側音響陰影」として装置に表示されているわけではないことを再認識し検査に臨むことが,像の正しい解釈につながるものと思われた.