Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
消化器:消化管2

(S424)

Elastographyによる食道胃接合部機能評価の検討

Evaluation of EGJ(esophagogastric junction) function using elastography

鷲見 肇1, 廣岡 芳樹2, 伊藤 彰浩1, 川嶋 啓揮1, 大野 栄三郎2, 伊藤 裕也1, 中村 正直1, 宮原 良二2, 大宮 直木1, 後藤 秀実1, 2

Hajime SUMI1, Yoshiki HIROOKA2, Akihiro ITOH1, Hiroki KAWASHIMA1, Eizaburo OHNO2, Yuya ITOH1, Masanao NAKAMURA1, Ryouji MIYAHARA2, Naoki OOMIYA1, Hidemi GOTO1, 2

1名古屋大学大学院医学系研究科消化器内科学, 2名古屋大学医学部附属病院光学医療診療部

1Department of Gastroenterology and Hepatology, Nagoya University Graduate School of Medicine, 2Department of Endoscopy, Nagoya University Hospital

キーワード :

【目的】
体外式超音波elastographyによる食道胃接合部(EGJ:esophagogastric junction)の経時的なelasticity index比を計測することによる食道胃接合部機能評価の可能性を検討すること.
【対象及び方法】
正常ボランティア3名および,2011年7月より2011年12月までに上部消化管内視鏡検査を施行し,EGJを経腹的にelastographyで経時的に観察した20例を対象とした.Elastographyによる硬さの時系列表示機能および複数個所でのelasticity index比表示機能を用いて,以下の項目について検討した.検討項目1)正常ボランティア3名に対し,随意筋(上腕二頭筋)の収縮,弛緩をelastographyにより経時的に観察し,筋収縮,弛緩によるelasticityの変化に対する認識の可能性.2)上部消化管内視鏡検査施行症例における食道内視鏡所見.3)心窩部よりEGJを描出し,経時的なelastographyを実施・記録した症例に対し,肝臓に基準のROIを,EGJにターゲットとなるROIを設定し,2領域における経時的な硬さの比を記録した.観察中の波形の頻度を統一するため30秒換算し,正常と食道疾患症例で比較検討をおこなった.波形は経時的な基準(肝臓)とEGJとのindex比とした.使用装置は,LOGIQ E9(GEヘルスケア・ジャパン社製超音波観測装置)でDirect Strain法におけるelastographyにて解析をおこなった.
【結果】
1)随意筋(上腕二頭筋)の収縮,弛緩をelastographyにて経時的に観察し得た.収縮,弛緩によりROI内は,収縮時はblueの硬さを示す領域が増え,伸展時は軟らかさを示すgreenが増加して観察された.Elastographyにおける皮下組織との対比では収縮,弛緩時に一致し,硬度変化を示す波形が観察された.筋の収縮,弛緩を経時的にelastographyにて評価可能と考えた.2)食道内視鏡所見の内訳は,正常(SSBE:short segment Barrett’s esophagusも含めた)14例,逆流性食道炎(ロサンゼルス分類GradeM 4例,GladeA 2例)6例であった.平均年齢はそれぞれ64歳,73歳であった.3) 平均観察時間は22±9秒で,正常における平均の波形の頻度は9.3±2.8回,逆流性食道炎では6.8±3.1回と逆流性食道炎症例ではやや低下する傾向であった(P=.091).有意ではなかったが,体外式超音波elastographyにて食道疾患における機能障害を評価できる可能性が示唆された.また,NERD(non-erosive reflex disease)のように内視鏡所見に異常が認められないが機能障害を有する症例や,アカラシアに対する内視鏡治療による機能改善等を評価できることが期待される.今回の検討は腹部超音波検査における質的評価から機能的評価の新しい試みであり,さらなる症例の蓄積,疾患の検討が必要である.
【結論】
体外式超音波elastographyによる経時的な観察により食道胃接合部機能の評価が可能であることが示唆された.