Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
消化器:消化管2

(S423)

経鼻胃管の超音波による視認性改善に関する検討

Devices for the better sonographic demonstration of nasogastric tube.

麓 由起子1, 畠 二郎2, 竹之内 陽子1, 中武 恵子1, 谷口 真由美1, 岩井 美喜1, 小島 健次1, 眞部 紀明2, 今村 祐志2, 春間 賢3

Yukiko FUMOTO1, Jiro HATA2, Youko TAKENOUCHI1, Keiko NAKATAKE1, Mayumi TANIGUCHI1, Miki IWAI1, Kenji KOJIMA1, Noriaki MANABE2, Hiroshi IMAMURA2, Ken HARUMA3

1川崎医科大学附属病院中央検査部, 2川崎医科大学検査診断学(内視鏡・超音波), 3川崎医科大学消化管内科学

1Department of Clinical Laboratory, Kawasaki Medical School Hospital, 2Division of Endoscopy and Ultrasound, Department of Clinical pathology and Laboratory Medicine, Kawasaki Medical School, 3Division of Gastroenterology, Department of Internal Medicine, Kawasaki Medical School

キーワード :

【はじめに】
経鼻胃管は診断や治療における様々な目的で使用されている.しかし時に気管への誤挿管による事故のため,現在では吸引液の酸度測定など煩雑な確認法が用いられている.胃管カテーテル(以下カテーテル)挿管後の確認方法として聴診,胃内容物の吸引,胸部Ⅹ線撮影などがあるが少なくとも食道に挿管されていることが直視できれば誤挿管の防止が可能である.これに対し超音波を用いた報告はみられるものの現実にはカテーテルの視認性は必ずしも良好とは言えず,そこで超音波による視認性の改善に関する検討を行った.
【方法】
カテーテルに以下のような処置を施した後,水浸法および擬似生体ファントム(寒天内に鶏ムネ肉を固定)を用いてカテーテルの描出を検討した.①:カテーテル表面に直接ダイヤモンドヤスリ(平型)で幅8mmの傷をつけて粗面にした.②:3種類のガイドワイヤーをカテーテル内に挿入し,ガイドワイヤーaにはダイヤモンドヤスリ(平型)を用いて幅8mmの傷をつけ,その位置がわかるように寒天作製時に印となるものを入れておいた.③:カテーテル内腔に50ml注入器で経腸栄養剤ラコール®を2ml/secで注入し,10〜15秒間動画で撮像した.材料としてカテーテルはニプロ胃管カテーテル(材質:ポリ塩化ビニル,外径:4.67mm, 14Fr, 壁の厚さ:0.75mm)ガイドワイヤーはa. ラジフォーカス®ガイドワイヤー(材質:超弾性合金,0.035インチ); b. ラジフォーカス®ガイドワイヤー(材質:超弾性合金,0.025インチ); c. クック®ガイドワイヤー(材質:ステンレススチール,0.035インチ,ヘパリンなし)の3種類を用い,使用機種は東芝SSA-700A, 探触子は7.5MHzリニアプローブを用いた.
【結果】
<水浸法>対照としてカテーテルを水浸法にて描出すると近位側と遠位側の壁とそれらに対する多重反射が描出された.(以下,Ⅰ)①:Ⅰに加え,傷をつけた領域に一致した幅約8mmの帯状高エコーが描出された.②:ガイドワイヤーaとcはカテーテルの近位側の壁とガイドワイヤーによる多重反射が観察され,bはⅠに加えガイドワイヤーとその多重反射が描出された.最も反射が強くみられたのはガイドワイヤーcであった.ガイドワイヤーaに傷をつけた場合は,カテーテルの近位側の壁とガイドワイヤーに対する多重反射に加え幅約8mmの帯状高エコーが描出された.③:Ⅰおよび内腔に微細点状高エコーが描出された.<擬似生体ファントム>カテーテルの内腔が空気の場合は,カテーテルの近位の壁とその多重反射が描出され,これを対照とした.(以下,Ⅱ)①:Ⅱ同様であり,傷をつけた領域は特定できなかった.②:3種類とも内腔が空気の場合はⅡ同様,水の場合はⅡに加え遠位側の壁とガイドワイヤーとそれらに対する多重反射が描出された.③:Ⅱに加え遠位側の壁とその多重反射および内腔に微細点状高エコーが描出された.
【考察】
水浸法では,カテーテル表面の粗面形成やガイドワイヤーの使用により視認性の向上を認めた.最も視認性に優れていたガイドワイヤーcはワイヤーがコイル状に巻かれており反射面が粗く描出されたと考えられた.またガイドワイヤーの材質の違いも関係していると推測された.一方,擬似生体ファントムを用いた視認性の検討では水浸法に近い環境下において1. 液体の注入 2. ガイドワイヤーの挿入 3. 粗面形成の順に超音波上の描出に改善を認めた.ファントムが生体と同じ環境とは言い難く,生体内で同様の結果が得られるか否かは明らかではない.本検討においてカテーテル内に液体を注入することで視認性の向上が期待されるものの,位置確認の方法として超音波が活用されるには更なる検討が必要であると思われた.