Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
消化器:消化管2

(S422)

腹部超音波スクリーニング検査における消化管癌(胃・大腸)の検出率について

Detection rate of the gastric and colorectal cancer using abdominal ultrasonography

川島 望1, 高橋 健一1, 乙部 克彦1, 竹島 賢治1, 安田 慈1, 今吉 由美1, 杉田 文芳1, 熊田 卓2, 豊田 秀徳2, 金森 明2

Nozomi KAWASHIMA1, Kenichi TAKAHASHI1, Katsuhiko OTOBE1, Kenji TAKESHIMA1, Shigeru YASUDA1, Yumi IMAYOSHI1, Fumiyoshi SUGITA1, Takashi KUMADA2, Hidenori TOYODA2, Akira KANAMORI2

1大垣市民病院診療検査科形態診断室, 2大垣市民病院消化器内科

1Department of Clinical Research, Ogaki Muniple Hospital, 2Department of Gastroenterology, Ogaki Muniple Hospital

キーワード :

【はじめに】
従来,腹部超音波検査では実質臓器に主眼がおかれているが,近年,消化器疾患のスクリーニング検査としての役割が増大している.食生活の変化に伴い消化管疾患が増加傾向にあり,一般に消化管の診断には内視鏡検査とバリウム検査(胃透視および注腸X線検査)があり,これらは消化管の粘膜面からの評価が行われている.一方,USは消化管の壁を直接観察すること出来ないが,癌のみならず炎症性疾患による壁の変化や周囲組織への波及などの所見を描出できる利点を有している.そこで今回我々は,当院の腹部超音波スクリーニング検査における進行胃癌と進行大腸癌の検出率を検討したので報告する.
【対象】
対象は,2006年1月から2011年2月までの約5年間に当院で胃癌・大腸癌と診断され手術を施行した胃癌483症例・大腸癌586症例のうち,胃内視鏡・大腸内視鏡検査もしくは胃透視・注腸X線検査において確定された時期より2か月以内に,腹部超音波検査が行われた進行胃癌160例,進行大腸癌434症例である.対象症例の内訳は,進行胃癌(男女比113:47,平均年齢69.2歳,腫瘍径中央値50mm),進行大腸癌(男女比261:175,平均年齢70歳,腫瘍径中央値40mm)であった.
【検討方法】
占拠領域,存在位置,癌の肉眼型,深達度,腫瘍径,BMI,超音波検査経験年数の項目に分け,各々が検出率に影響するかどうかを検討した.全例無処置にて腹部超音波検査を施行し,実質臓器および消化管に対しスクリーニング検査を行った.検査時には血液・生化等の患者の前情報は検者には知らされていない.今回の検討では以下の所見を認めるものを体外式超音波検査の癌検出とした.胃;限局性またはび慢性の壁肥厚(6mm以上),層構造の消失または不明瞭化,内腔面の壁不整,壁硬化像の有無により総合的に行った.大腸;大腸壁の層構造が消失した限局性の壁肥厚像(5mm以上),壁硬化像,漿膜の不整,内腔の狭窄の有無により総合的に行った.
【結果】
全体の検出率は,進行胃癌53.1%,進行大腸癌45.4%であった.胃の占拠領域別検出率は,上部25.0%・中部43.9%・下部64.2%であった.存在位置別検出率では,前壁75.0%・後壁48.6%・小彎54.9%・大彎35.7%,大腸は,上行結腸61.7%,横行結腸54.8%,下行結腸71.4%,S状結腸38.4%,直腸29.7%であった.肉眼型別検出率は,胃は1型12.5%・2型53.8%・3型58.6%・4型47.1%,大腸は1型27.8%・2型45.5%・3型59.0%であった.深達度別検出率では,胃は2型40.6%・3型54.6%・4型87.5%,大腸は2型21.1%・3型47.9%・4型57.3%であった.腫瘍の大きさでは,胃・大腸ともに腫瘍径が大きいほど検出率が高かった.胃・大腸ともにBMIでの検出率では有意差は認められなかった.超音波経験年数による検出率は,胃は2年未満19.3%・2〜8年37.2%・8年以上66.7%,大腸は,2年未満35%・2〜8年30%・8年以上54%であった.
【考察】
当院の消化管癌(進行胃癌・進行大腸癌)の検出率は50%前後であり,諸家の報告より低い検出率であった.腹部超音波検査は,無処置にて行え,他検査に比べると簡便に検査が行えるため有用である.しかしながら,超音波経験年数での検出率の差が大きいため,検出率向上のため,走査手技や知識の向上を促進していく必要があると考える.