Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
消化器:消化管1

(S420)

先天性空腸狭窄の1例

A case of congenital jejunal stenosis

藤井 喜充

Yoshimitsu FUJII

中野こども病院小児科

Pediatrics, Nakano Children’s Hospital

キーワード :

超音波検査を含めた検査で膜様十二指腸狭窄wind-sock型の術前診断であった先天性の空腸狭窄を経験したので,診断確定に有用な所見を検討し報告する.
【症例】
6カ月男児
【主訴】
胆汁性嘔吐
【現病歴】
生後2カ月ごろより胆汁性嘔吐が時々みられたが,全身状態は良好であった.生後6カ月時に急性上気道炎に罹患し,当院を受診した.腹部は軟で腸音は正常であったが,上腹部膨満がみられたため腹部単純X線写真を撮影した.triple bubble signが確認されたが,小腸から大腸にかけて腸管ガス像がみられた.腹部超音波検査では十二指腸の著明な拡張がみられ,拡張した水平脚が上腸間膜動脈の後方を走行する像がみられた.十二指腸内容物はto and froであったが,長時間観察するとトライツ靭帯側に移動がみられた.血液検査では血中ガストリン値3100 pg/mlと,rapid turn over protein低値がみられた.小児外科専門施設で上部消化管内視鏡検査が施行され,腫瘍性病変は否定的でありcaliber changeがみられたことから,十二指腸膜様狭窄wind-sock型の術前診断で開腹手術をしこした.十二指腸内に膜様狭窄は認めず,トライツ靭帯直後の空腸起始部にcaliber changeを認めた.十二指腸水平脚から空腸起始部までを切除し,十二指腸下行脚と空腸の側々吻合にて再建した.病理標本では狭窄部に炎症所見を認めず,先天性空腸狭窄と診断した.術後血中ガストリン値は速やかに低下し,消化管内容物停滞による一過性高ガストリン血症と診断した.
【考察】
先天性小腸狭窄・閉鎖は5000出生に1人の頻度とされ,95%以上が閉鎖である.胎児期の病変部血行障害が原因と考えられており,遺伝子異常が関与している可能性は低いとされている.血行障害の程度によっては閉鎖に至らず,軽度狭窄となり成長後食事内容が変わってから食餌イレウスとして発症する.本症例も離乳食開始後に発症しており,合致する臨床経過であった.超音波検査で十二指腸水平脚が上腸間膜動脈後方を走行していたため,トライツ靭帯は形成されていると考え,caliber changeの位置より十二指腸膜様狭窄と超音波上も診断したが,膜自体は超音波および上部消化管内視鏡検査でも確認されてはいなかった.結果として術野展開において,拡大手術となったのが反省点である.超音波検査上の診断アプローチとして十二指腸水平脚の走行の確認が重要であることは,上腸間膜動脈症候群の超音波診断の報告などで既になされているが(児玉ら:日本消化器病学会雑誌,2010年),十二指腸拡張の原因診断は必ずしも容易ではない.十二指腸膜様狭窄wind-sock型と超音波検査で診断するならば,膜自体の確認が必須であると結論した.