Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
消化器:膵2

(S417)

急性膵炎の超音波診断は可能か?

Can we diagnose pancreatitis with ultrasonography?

今村 祐志1, 畠 二郎1, 宇賀治 良平2, 佐々木 恭2, 眞部 紀明1, 楠 裕明3, 鎌田 智有4, 河合 良介1, 春間 賢4

Hiroshi IMAMURA1, Jiro HATA1, Ryohei UGAJI2, Kyo SASAKI2, Noriaki MANABE1, Hiroaki KUSUNOKI3, Tomoari KAMADA4, Ryousuke KAWAI1, Ken HARUMA4

1川崎医科大学検査診断学(内視鏡・超音波), 2川崎医科大学肝胆膵内科学, 3川崎医科大学総合臨床医学, 4川崎医科大学消化管内科学

1Division of Endoscopy and Ultrasound, Dept. of Clinical Pathology and Laboratory Medicine, Kawasaki Medical School, 2Hepatology, Kawasaki Medical School, 3General Medicine, Kawasaki Medical School, 4Gastroenterology, Kawasaki Medical School

キーワード :

【目的】
急性膵炎は日常臨床でよく遭遇する重篤な疾患の一つである.診断基準の一つに「画像で膵に急性膵炎に伴う異常がある」とあり,急性膵炎の診断において画像診断が重要であるが,超音波の診断能に関する最近の報告は少ない.そこで,急性膵炎に特徴的とされる所見の出現率を算出して,急性膵炎診断における超音波の診断能,限界を検討した.
【対象と方法】
2010年1月から2011年11月までに急性膵炎と診断された症例の中で,腹部超音波を施行した23例(年齢32〜84歳,平均69.6歳,男性12名,女性11名)を対象とした.なお,groove pancreatitis,慢性膵炎の急性増悪は除外した.後ろ向きに診療録,超音波所見用紙,記録画像から年齢,性,急性膵炎重症度,他の画像所見,および急性膵炎の超音波所見の有無を調査した.検討した超音波所見は,直接所見である膵腫大,膵輪郭不明瞭,膵実質エコーの異常と間接所見である膵周囲の低エコー域または液体貯留,胸・腹水,近接腸管の蠕動低下(所見用紙に記載ある症例のみ)とした.膵腫大は,記録画像から膵体部あるいは膵頭部の前後径を測定して,日本超音波医学会テキストにより膵頭部で3cm以上,膵体部で2cm以上を腫大とするとともにその平均を算出した.使用機器は東芝社製AplioTM,使用プローブは3.5,6MHzコンベックス,6,7.5MHzリニアを用いた.
【結果】
超音波所見の出現率は,膵腫大は65.2%(15例),膵輪郭不明瞭は34.8%(8例),膵実質エコーの異常は56.5%(13例),膵周囲の低エコーまたは液体貯留は39.1%(9例),胸・腹水は39.1%(9例),近接腸管の蠕動低下は50.0%(4/8例)であった.これらの所見が全て認められなかった症例が3例(13.0%)にみられ,いずれも軽症であった.超音波の2日後に撮像したMRI拡散強調画像において高信号および膵尾部軽度腫大がみられた症例が1例,CTで膵周囲の脂肪織濃度上昇がみられた症例が1例,1例はCTにおいても異常所見がみられなかった.膵前後径の平均は膵体部18.7±5.9mm,膵頭部33.5±0.6mmであった.
【考察】
急性膵炎の診断において画像診断は重要な役割を有するが,急性膵炎に特徴的とされる各所見の出現率は必ずしも高くなかった.胸・腹水など重症度により必ずしも出現しない所見もあるが,直接所見である膵腫大がみられた症例は65.2%と低かった.過去の画像が残っている症例はそれとの比較,あるいは定義上は膵腫大ないが年齢の割に膵臓が大きいという判断から,膵腫大と判断をした症例も多かった.体格や年齢に合わせた膵腫大の基準を新たに設定する必要があると思われた.いずれかの所見が一つ以上認められた症例は20例(87%)であり,各所見を丁寧に観察して総合的に判断することで急性膵炎の診断が可能である症例が多いが,3例(13%)は異常所見を指摘できなかったことから,超音波では診断が困難な症例があることに注意が必要である.超音波で診断困難であった症例の1例は,超音波から2日後のMRIでの指摘なので直接の比較は困難であるが,膵尾部の浮腫性変化が指摘できなかったと考えられ,もう1例は膵周囲の炎症所見を指摘できなかったと考えられた.
【結語】
テキストに記載されている急性膵炎の超音波所見の出現率は必ずしも高くなく,それぞれの所見を総合的に判断して診断する必要がある.また,超音波では診断困難な症例もあるため注意を要する.