Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
消化器:肝・Elastography 1

(S415)

HBe抗原陰性無症候性HBVキャリアにおける肝線維化進展因子-Elastographyを用いた検討

Factors associated with liver fibrosis evaluated by elastography in HBeAg -negative asymptomatic HBV carriers

大川 和良1, 今中 和穗1, 宮崎 さや子2, 三栖 弘三2, 松野 徳視2, 高倉 玲奈3, 田中 幸子3

Kazuyoshi OHKAWA1, Kazuho IMANAKA1, Sayako MIYAZAKI2, Kouzou MISU2, Noritoshi MATSUNO2, Rena TAKAKURA3, Sachiko TANAKA3

1大阪府立成人病センター肝胆膵内科, 2大阪府立成人病センター臨床検査部, 3大阪府立成人病センター検診部

1Department of Hepatobiliary and Pancreatic Oncology, Osaka Medical Center for Cancer and Cardiovascular Diseases, 2Department of Clinical Laboratory, Osaka Medical Center for Cancer and Cardiovascular Diseases, 3Department of Cancer Survey, Osaka Medical Center for Cancer and Cardiovascular Diseases

キーワード :

【はじめに】
HBe抗原陰性で長期にわたりALTが正常化を持続するHBe抗原陰性無症候性HBVキャリア(ASC)は,おおむね疾患予後は良好であるが,少数ながら肝硬変や肝癌への疾患進展が認められる症例も存在する.しかしながらHBe抗原陰性ASCでは侵襲的な肝生検は通常行われず,肝線維化の評価がなされていないのが現状である.最近,非侵襲的な肝線維化評価法が相次いで報告されており,Real-time Tissue Elastography (RTE)もその一つとして臨床応用されつつある.
【目的】
HBe抗原陰性ASCにおける肝線維化をRTEを用いて測定し,肝線維化に寄与する因子についての解析を試みた.
【方法】
HBe抗原陰性かつALT正常を半年以上持続するHBe抗原陰性ASC 45例(年齢59±12歳,男/女 20/25)を対象とした.RTEは藤本ら(肝臓2010; 51: 539),森川ら(J Gasroenterol 2011; 46: 350)の方法に基づき,右肋間より肝右葉を観察し,4種類のパラメーター,すなわち歪み平均値(mean),歪み標準偏差(SD),硬化領域の面積率(area),複雑度(complexity)を測定した.(なお,RTEでは線維化の進展とともにmeanは減少し,SD,area,complexityは増加することが知られている.)超音波診断装置はHI VISION900もしくはPreirus(日立メディコ社),探触子はEUP-L52(日立メディコ社)を用いた.対象症例における臨床背景因子(年齢,性別,血小板,ALT)ならびに各種HBVマーカー(HBコア関連抗原,HBV DNA,コアプロモーター[CP]変異,プレコア[PC]変異)と,RTEの各種パラメーターとの相関を検討することで,HBe抗原陰性ASCにおける肝線維化進展に寄与する因子を解析した.
【結果】
年齢60歳以上(n = 25)において60歳未満(n = 20)よりmeanは有意に低く(p < 0.05),area (p = 0.05),complexity (p < 0.05)は高い傾向にあった.またCP変異検査ではmutant群 (n = 23),wild群(n = 14),感度以下群(n = 8)の3群に分類されたが,RTEパラメーターとの関連では,mean (p < 0.02),area (p < 0.05),complexity (p < 0.02)との間に有意な関連を認め,感度以下群,mutant群,wild群の順に肝線維化が進展する傾向を認めた.その他の因子と肝線維化の間に有意な関連は認められなかった.
【結語】
HBe抗原陰性ASCの肝線維化は,1)高齢者2)CP変異を認めない症例において,より進展している可能性が示された.