鈴木 都男, 堀本 雅祥, 奥田 偉秀, 後藤 靖和, 水野 龍義, 大田 真紀代, 山口 大輔, 真田 徹, 良原 丈夫

Kunio SUZUKI, Masayoshi HORIMOTO, Yorihide OKUDA, Yasukazu GOTOU, Tatsunori MIZUNO, Makiyo OOTA, Daisuke YAMAGUCHI, Tooru SANADA, Takeo YOSHIHARA

済生会千里病院消化器内科

Gastroenterology, Saiseikai Senri Hospital

キーワード :

【目的】
慢性肝疾患患者における原発性肝癌（以下HCC）のスクリーニングの普及と,画像診断装置の性能の向上にともない,小さな腫瘤の段階でみつかる病変が増加している．そのような腫瘤性病変には造影CTなどで典型的なHCCの画像所見を呈さない高分化型HCCや前癌病変などが含まれ,ソナゾイドを用いた造影超音波検査（以下,CEUS）やプリモビスト（Gd-EOB-DTPA）を用いた造影MRIなどでの精査が行われるが,やはり画像診断に苦慮することが多い．我々は病理学的に診断された腫瘤性病変においてHCCの診断や分化度とCEUS所見との関連を検討した．
【対象と方法】
対象: 2007年4月より2011年3月までの間にCEUSが施行され,肝腫瘍生検や肝癌に対する肝切除術で腫瘍の病理学的検索が行われた慢性肝疾患患者32症例における肝腫瘍44結節を対象とした．平均径は17.4±11.2mm．CEUSにはアロカProsound II SSD-6500とα10を使用した．ソナゾイドは推奨量の半量を静注し,静注後30秒程度までの早期血管相と,10分後のクッパー相を観察した．腫瘍の染影を周囲肝よりhyper,iso,hypoとし,早期相とクッパー相の染影の組み合わせで染影パターンを表現し,病理所見と対比して検討した．辺縁が造影されるものはperipheralと表現した．
【結果】
44結節中,HCCが確認されたものは29結節で,他は腺癌（肝メタ） 2,肝硬変 6,慢性肝炎 4,focal fatty sparing 2,fatty change 1であった．HCCの分化度については高分化型20結節,高〜中分化型2結節,中分化型6結節,低分化型1結節であった．肝癌の分化度とCEUS所見との関係: ①高分化型HCCにおけるCEUS所見：早期相-クッパー相の所見とその所見を呈した結節の数はhyper-iso 1,hyper-hypo 3,iso-iso 1,iso-hypo 2,hypo-iso 13であった．②高〜中分化型HCCにおける所見：hyper-hypo 1,hyper-peripheral 1であった．③中分化型HCCにおける所見：hyper-hypo 5,iso-hypo 1であった．④低分化型HCCにおける所見：hyper-hypo 1であった．⑤肝メタにおける所見：peripheral-hypo 2であった．⑥非腫瘍性組織における所見：hyper-iso 3,hyper-hypo 1,iso-iso 2,iso-hypo 2,hypo-iso 4,hypo-hypo 1であった．hypo-iso所見と高分化型HCCとの関連：hypo-isoのCEUS所見は高分化型HCCと有意な関連がみられた（p=0.0013,Fisher’s test）．
【考察】
高分化型HCCにおいてCEUSではhypo-iso所見を呈する結節が多数を占め,中分化型HCCではhyper-hypoが多い結果であった．前癌病変から高分化型肝癌,古典的肝癌へと進展する際に動脈血流は低下から増加へ,クッパー細胞数は正常から低下へと変化することが知られている．高分化型HCCにおけるhypo-isoと中分化型HCCにおけるhyper-hypoの染影パターンはこのような変化を反映したものであると考えられた．
【結論】
CEUSにて,HCCの脱分化にともなう組織学的変化をとらえることができると考えられた．