Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
消化器:肝腫瘍・造影

(S412)

造影超音波所見の“ぬけ(マンホール現象)”に関する検討

“Manhole” phenomenon of contrast-enhansed sonographic findings

大山 葉子1, 石田 秀明2, 長沼 裕子3, 星野 孝男4, 三浦 百子1, 高橋 律子1, 草皆 千春1, 渡部 多佳子2, 米山 和夫4

Yoko OHYAMA1, Hideaki ISHIDA2, Hiroko NAGANUMA3, Takao HOSHINO4, Momoko MIURA1, Ritsuko TAKAHASHI1, Chiharu KUSAKAI1, Takako WATANABE2, Kazuo YONEYAMA4

1秋田組合総合病院臨床検査科, 2秋田赤十字病院超音波センター, 3市立横手病院内科, 4秋田組合総合病院消化器科

1Medical Laboratory, Akita Kumiai General Hospital, 2Center of Diagnostic Ultrasound, Akita Red Cross Hospital, 3Internal Medicine, Yokote Municipal Hospital, 4Gastroenterology, Akita Kumiai General Hospital

キーワード :

【はじめに】
造影超音波検査は現在肝腫瘍の質的診断の大きな柱となっている.しかし,造影超音波所見に関しては報告者により微妙に異なり,特に造影剤注入後一定時間を経たあとの“ぬけ”に関して差異が認められる印象がある.今回我々は,その所見の差異に注目し下記のような検討を行い若干の知見を得たので報告する.
【使用診断装置】
東芝社製:AplioXG, GE社製:LOGIQE9,日立社製:Preirus,フィリプス社製:iU22xMATRIX.
【超音波造影剤及び造影法】
造影剤はSonazoid(GEhealthcare社製).造影法は通常の肝腫瘍造影法に準じ,MI値は0.25前後とした.
【対象と方法】
通常我々はプローブを小刻みに動かし病変を観察しているが,この動きを数秒間停止した場合に所見が大きく変化しえるかを,造影剤注入後3分以降の時相で検討した.疾患(97例123病変)の内訳は,原発性肝細胞癌25例27病変(男性19例・女性6例,平均年齢71.0歳).転移性肝癌30例47病変(男性21例・女性9例,平均年齢70.6歳).肝血管腫は38例45病変(男性20例・女性18例,平均年齢56.6歳)であり,うち7病変は動脈門脈短絡を伴っていた.FNH3例3病変(男性1例・女性2例,平均年齢44.0歳),肝のう胞腺腫1例(男性64歳)であった.なお各疾患の最終診断は,原発性肝細胞癌に関しては造影超音波とCTの総合所見で,転移性肝癌に関しても造影超音波とCTの総合所見で,肝血管腫およびFNHに関しては早期血管相における特徴的な所見(cotton-wool,spoke-wheel)を基とした.肝血管腫に伴う動脈門脈短絡の診断はカラードプラ所見における門脈の逆流を基とした.
【結果】
a)所見が大きく変化が見られたのは123病変中28病変(22.8%),全例肝血管腫であった.b)疾患別にみると肝血管腫47病変中28病変(62.2%),他の肝腫瘍(原発性肝細胞癌・転移性肝癌・FNH・肝のう胞腺腫)では大きな所見の変化は見られなかった.c)肝血管腫における変化は,fill-in現象で染まった腫瘍が,プローブを固定した観察下でほぼ全体が均一にぬけ,プローブ固定解除後次第に以前の染まりの状態に戻る,というものであり,ちょうどマンホールの蓋の開け閉めを連想させる現象であった.以下この現象を便宜上マンホール現象と呼ぶ事とする.
【まとめと考察】
造影超音波は肝腫瘍の診断に鋭敏とされている.しかし報告者により所見に差異がある.今回の検討から通常行われている0.25前後の低いMI値でも造影剤の破壊が起こっている事が改めて確認され,これが差異の一因と思われた.造影剤のぬけ(マンホール現象) は肝血管腫で頻度が高く,原発性肝細胞癌や転移性肝癌では見られなかった.これは原発性肝細胞癌では動脈血優位のため,腫瘍内造影剤破壊後も,直ちに造影剤の供給が行われるため病変部全体が抜けるというマンホール現象が起きないものと思わる.一方肝血管腫では,動脈門脈短絡例を除くと,腫瘍全体が類洞から形成されており,その類洞内を緩徐に流れる血流が主体であるため,造影剤破壊後も造影剤が病変内に急速に供給される事はなく,これがマンホール現象として表現されているものと思われた.この事は逆に肝血管腫に対しプローブを長時間固定し観察する事により病変部全体が“ぬけ”として認識され肝転移等と誤認される可能性がある事にもなる.今回の検討で病変部の性状を把握するためには,観察断面をあまり一定にしない事が望ましいと思われた,同時にこのマンホール現象の有無が肝血管腫の診断の一助になりえるのではなのではないかと思われた.