Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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cover

2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
消化器:膵1

(S411)

EUSFNAにて診断しえた肺癌膵転移の一例

A case of pancreatic metastasis from lung cancer diagnosed by endoscopic ultrasound-guided fine needle aspiration (EUSFNA)

藤井 雅邦1, 吉岡 正雄1, 渡邉 一彦1, 齋藤 玄哲1, 伊藤 守1, 石山 修平1, 藤原 明子1, 片岡 正文2, 塩出 純二1

Masakuni FUJII1, Masao YOSHIOKA1, Kazuhiko WATANABE1, Hiroaki SAITO1, Mamoru ITO1, Shuhei ISHIYAMA1, Akiko FUJIWARA1, Masahumi KATAOKA2, Jyunji SHIODE1

1岡山済生会総合病院内科, 2岡山済生会総合病院外科

1Internal medicine, Okayama Saiseikai General Hospital, 2Surgery, Okayama Saiseikai General Hospital

キーワード :

【はじめに】
今回我々は,肺癌術後に発生した転移性膵腫瘍をEUSFNAで診断し,治療方針決定に有用であった症例を経験した.肺癌からの転移性膵腫瘍は極めてまれであり,本症例での超音波像やEUS像を含めた各種画像検査は貴重なものと考えられたため,若干の文献的考察を加えて報告する.
【症例】
78歳,男性.咳嗽を主訴に近医受診.胸部X線検査にて左下葉に陰影を認め,胸部CT検査を施行.左下葉S8aに69×54mm大の内部に空洞と辺縁にはノッチを伴う腫瘤影を認めた.CYFRA11と腫瘍マーカーも上昇もしていた.気管支鏡下の同部の生検で扁平上皮癌を認め,肺癌と診断され,加療目的にて当院紹介となった.PET検査も施行したが,他部位には異常を認めず,当院外科にて左肺下葉切除術を施行した.病理結果は,7.0×3.5×0.0cm, 扁平上皮癌,切除段端(-), pT3, pN0, M0であった.手術後3カ月後のCT検査では明らかな再発所見は認めなかったが,6カ月後に黄疸,発熱で救急受診.血液検査で,WBC13330, CRP7.3, AST394, TBIL3.6, γGTP677と炎症反応上昇と肝胆道系酵素が上昇していた.腹部CT検査では,膵頭部に約4cm大の腫瘤性病変を認め,肝内胆管から総胆管の拡張,主膵管の拡張所見も認め,膵頭部腫瘤による閉塞性黄疸,胆管炎が疑われた.緊急ERCPを施行しENBDを留置し加療した.ERCPの際に乳頭部に発赤所見を認め,同部の生検にてadenocarcinomaを認め,乳頭部癌と診断されたが,乳頭より離れた下部胆管が狭窄しており,黄疸は膵頭部腫瘤が原因と判断した.造影CTを施行すると,膵頭部の腫瘤は造影効果の乏しい比較的境界明瞭な腫瘤であり,後期相で周囲より弱く造影されていた.右腎にも33×24mm大,17mm大の腫瘤を認め,膵頭部の腫瘤と同様の造影パターンを呈していた.MRIでは膵頭部腫瘤は,拡散強調画像で高信号,T2で比較的低信号を呈していた.右腎の腫瘤も膵頭部腫瘤と同様の信号パターンを呈していた.腹部超音波検査では,膵頭部の腫瘤も,右腎の腫瘤も比較的境界明瞭な低エコー腫瘤として描出された.画像所見から肺癌の膵転移,腎転移の可能性を疑った.腎腫瘤に対してはCTガイド下の腫瘤生検を施行し肺癌の手術病理所見と類似した病理像(扁平上皮癌)を認め,肺癌の腎転移と診断した.膵頭部腫瘤に対しては,ENBDからERBDへ変更の際に胆管造影,IDUS, 胆汁細胞診,擦過細胞診を施行.下部胆管に約20mm長の狭窄を認め,狭窄部に一致してIDUSでは低エコー腫瘤像を認めた.細胞診は明らかな悪性所見を認めなかった.さらにEUSを施行し,約35mm大の比較的境界明瞭な内部エコー均一なhypoechoicな腫瘤像を認めた.膵腫瘤に対しては確定診断のためにEUSFNAを施行した.膵腫瘤も,肺腫瘤像と腎腫瘤像の病理組織像に類似した病理所見を認め,肺癌(扁平上皮癌)の膵転移と診断した.最終的には,肺癌(扁平上皮癌)の膵転移,腎転移,十二指腸乳頭部癌(腺癌)の重複癌と診断し,現在化学療法施行中である.
【考察】
肺癌の腎転移,膵転移を同時に切除以外の方法で診断しえた報告例はない.また本例は乳頭部癌の重複癌でもあり,非常にまれなケースであり,本例で得られた画像検査は貴重なものと考えられた.膵腫瘤性病変の診断にはEUSFNAが有用であった.