Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
消化器:肝・症例2

(S408)

Clear cell typeの肝細胞癌の一例

A case of clear cell hepatocellular carcinoma

土屋 昌子, 石川 剛, 高見 太郎, 寺井 崇二, 山崎 隆弘, 坂井田 功

Masako TSUCHIYA, Tsuyoshi ISHIKAWA, Taro TAKAMI, Shuuji TERAI, Takahiro YAMASAKI, Isao SAKAIDA

山口大学大学院医学系研究科消化器病態内科学

Gastroenterology and Hepatology, Yamaguchi University School of Medicine

キーワード :

【はじめに】
肝細胞癌(hepatocellular carcinoma: HCC)には腫瘍細胞が淡明な細胞形質をもつものが存在する.このclear cell HCC(CHCC)は高エコー像を呈することが多く,乏血性結節といわれているが,報告は比較的稀である.今回我々は,Gd-EOB-DTPAによる造影MR(Gd-EOB-MRI)の肝細胞相のみで指摘され,診断・治療支援にReal-time Virtual Sonography (RVS)が有用であったCHCC症例を経験したので報告する.
【症例】
症例は68歳,女性.C型肝硬変症,脳梗塞後遺症と高血圧の診断で近医に通院中であった.平成23年6月に血清AFP値の上昇を認め,腹部超音波検査にて肝S5に径30mmの腫瘍性病変を認めた.Dynamic CT検査にて同部位の単発HCCと診断され,精査・加療目的で当院に紹介となった.当院でGd-EOB-MRIを施行したところ,S5病変は典型的なHCC所見であったが,S2にT1強調画像でわずかに高信号となり,造影にて動脈相では染影されず,門脈相から平行相でごく淡い洗い出しを呈し,肝細胞相でDefectとなる26mmの腫瘍性病変を認めた.このS2病変は腹部超音波検査のBモードでは指摘困難であった.Sonazoid®による造影超音波検査(CEUS)を施行したが,後血管相(post vascular phase)にて低エコーまたはDefectを呈さず病変の同定は困難で,網内系機能は保持されていると考えられた(GE Healthcare Japan 社のLOGIQ7を使用).そこでS2の乏血性結節に対し,MRI肝細胞相画像によるRVSにより経皮的肝腫瘍生検を施行し(日立メディコ社製EUB-8500を使用),中分化型肝細胞癌(clear cell type)の病理組織診断を得た.S5病変対しては平成23年9月に腹部血管造影塞栓術を,S2病変対しては11月に経皮的ラジオ波焼灼療法(radio frequency ablation: RFA) を施行した.
【まとめ】
本症例は多中心性発生の肝細胞癌と考えられた.S2病変は中分化型という悪性度であったが,造影CT・CEUSでは同定しえず,EOB-MRIの肝細胞相で指摘可能であった.以上,我々はCHCCの診断に関してGd-EOB-MRIがCEUSより有用で,腫瘍生検やRFAなどの診断・治療支援においてRVSが有用であった症例を経験した.