Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
消化器:肝・症例2

(S408)

門脈腫瘍塞栓内に流入する拍動波をカラードップラーにて認め剖検所見と対比しえた1例

Pathological finding of feeding artery, which was seen by Pulsed Doppler in Tumor Portal vein Thrombosis.

山田 正明1, 2, 松井 篤3, 大谷 恭子4, 藤本 誠1

Masaaki YAMADA1, 2, Atsushi MATSUI3, Kyouko OOTANI4, Makoto FUJIMOTO1

1富山大学附属病院和漢診療科, 2藤聖会 八尾総合病院消化器科, 3富山大学附属病院臨床研修部, 4富山大学附属病院病理部

1Japanese oriental medicine, Toyama university, 2Gastroenterology & Hepatology, Yatuo General Hospital, 3Training, Toyama university, 4Laboratory of Pathology, Toyama university

キーワード :

【緒言】
近年,門脈塞栓の良性,悪性病変の鑑別にソナゾイド造影超音波が有用と報告されている.しかし造影超音波検査が可能でない施設も多い.今回,C型肝炎,肝硬変の肝細胞癌と診断されている患者に通常の超音波検査にて門脈塞栓と,カラードップラーにてそれに流入する拍動波を認め,剖検にて血管の病理所見と対比したので報告する.
【症例】
87歳女性.
【主訴】
倦怠感,両側下腿浮腫.
【現病歴】
62歳時にC型肝炎と肝硬変を診断され,当科に通院中であった.1999年から特発性間質性肺炎(IIP)を発症し,2008年からHOT(在宅酸素療法)を開始されていた.2010年4月に呼吸苦にて当科に入院され,Dy-CTにてS5/8に3cmのHCCを疑う所見を認めた.IIPのためⅡ型呼吸不全もあり,全身状態不良のためRFAやTACEは行わなかった.2011年6月に倦怠感増悪と下腿浮腫のため入院となった.
【経過】
Dy-CTにてS8,4,5に動脈相にて濃染される境界不明瞭な腫瘍を認め,周囲にも1cm未満の腫瘍が多発していた.また門脈本幹と右枝に造影効果の無い塞栓を認めた.精査のため超音波検査を行った.カラードップラーにて門脈本幹内の塞栓にspottyな血流を認め,門脈壁を貫通して塞栓部位に流入する血流を認めた.血流は拍動波であり,肝細胞癌による腫瘍塞栓と診断した.入院第14病日に永眠された.剖検の肉眼割面にて肝S8に25mmの境界不明瞭な腫瘤を認め,右葉全体10mm未満の微小結節がびまん性に多発しており,門脈本幹は血腫を伴う腫瘤にて閉塞していた.組織学的には腫瘍部は中分化型肝細胞癌であった.またドップラーにて描出したと思われる血管は門脈近傍に認め,径3mmでしっかりとした構造壁を持った動脈であった.また,門脈腫瘍内には毛細血管が豊富に形成されていた.
【考察・結語】
本症例では経過から血栓ではなく腫瘍塞栓と診断したが,CTでは造影効果が認められず,判別できなかった.超音波検査は低侵襲であり,カラードップラーが鑑別に有用であった.剖検にて門脈近傍に動脈性血管の確認と,門脈腫瘍内の豊富な毛細血管を確認した.剖検所見を記載された報告はまれであり,文献的考察を加えて報告する.