Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
消化器:肝・症例2

(S407)

非典型的な超音波像を呈したアルコール性肝障害併存肝細胞癌の一例

A case of hepatocellular carcinoma associated with alcoholic liver fibrosis showing atypical ultrasonography

五十嵐 悠一, 斎藤 明子, 島津 国子, 合阪 暁, 山本 果奈, 高山 敬子, 白鳥 敬子, 片桐 聡, 山本 雅一

Yuichi IKARASHI, Akiko SAITO, Kuniko SHIMAZU, Aki AISAKA, Kana YAMAMOTO, Yukiko TAKAYAMA, Keiko SHIRATORI, Satoshi KATAGIRI, Masakazu YAMAMOTO

東京女子医科大学病院消化器病センター

Institute of Gastroenterology, Tokyo Women’s Medical University Hospital

キーワード :

【症例】
64歳,男性.主訴:なし(肝SOL精査).既往歴,家族歴:特記すべき所見なし.現病歴:2009年検診にてCA19-9 50 U/mlと異常値を指摘され,上下部消化管内視鏡検査,腹部CT検査を施行したが肝嚢胞のみで経過観察となった.2011年の検診でCA19-9 76 U/mlと上昇しており,当院消化器内科受診.腹部超音波検査およびCT検査にて肝S4,S8にSOLを認め精査加療目的で入院となった.入院時検査成績:WBC 4380μl, Hb15.6 g/dl, Plt 14.2万/μl, Alb 5.1 g/dl, AST 79 U/l, ALT 73 U/l, LDH 194 U/l, ALP 176 U/l, γ-GTP 323 U/l, T-Bil 0.7 mg/dl, AFP 247 ng/ml, PIVKA-2 250 mAU/ml, CEA 4.2 ng/ml, CA19-9 67 U/ml, ウイルスマーカー陰性であった.入院後経過:超音波検査で肝は腫大なく,脈管抽出は比較的良好であるが高輝度肝であった.S4にふたコブ状を示す径70mmの結節性病変あり.境界はやや不明瞭,辺縁には比較的幅の広い低エコー域を認め,内部には40mm大の音響陰影を伴う高エコー結節部分と10〜15mm 大の小結節の集簇した部分(高エコーと低エコーあり)が存在した.S8には35mmの低エコーで,一部に高エコーの突出部を有する結節を認めた.ソナゾイド造影エコーでは,S4の結節は,動脈相で高エコー部分は染影されず,低エコー部分のみ染影を認め,3分でwash outされた.辺縁の低エコー域も動脈相で淡く染影され10分でwash outされた.辺縁の低エコー域が,肝細胞癌の被膜としては幅広いが,脂肪沈着または壊死を含む肝細胞癌が疑われた.腹部造影CTでは,S4は低濃度でenhanceされない結節と動脈相にて高輝度となりwash outされる結節がふたコブ状に認められた.S8は結節全体がenhanceされ,wash outされた.EOB-MRI検査にて肝S3/4およびS8の腫瘍は部分的に脂肪成分を含む肝細胞癌と診断された.PET-CTでは肝腫瘤部位も含め異常集積は認めなかった.併存肝疾患は,HBV,HCV陰性,ANA 80倍(homogeneous,speckled),AMA 20倍であったが,IgG 743 mg/dl,IgM 103 mg/dlであり,アルコール多飲歴(積算飲酒量0.98t),を認めることからアルコール性肝障害であり,肥満,糖尿病による影響も加味されていると考えられた.肝障害度Aであり手術適応と考え,左葉+S8切除術を施行した.病理組織所見:切除標本割面ではS3/4に68×37mm,S8に34×25mmの結節型肝細胞癌を認めた.病理組織所見では,S3/4の大部分は壊死像を呈し,viable部分は索状型中分化型の肝細胞癌であり,辺縁には高分化型肝細胞癌を認めた.S8は中分化型の肝細胞癌であった.非癌肝は脂肪沈着とpericellular fibrosisをみとめるAlcoholic fibrosisの所見であった.
【まとめ】
非B非 Cのアルコール性肝障害に併存する肝細胞癌では,多彩な超音波像を呈することが多い.本症例も高エコー部分が結節の大部分を占め,辺縁には腫瘍径に比して幅の広い低エコー域を認める非典型所見を呈したので,病理所見と対比し報告する.