Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
消化器:肝・症例2

(S406)

肝細胞癌との鑑別に苦慮した肝内胆管腺腫の一例

A case of intrahepatic bile duct adenoma that was difficult to distinguish from hepatocellular carcinoma

高島 健司1, 杉之下 与志樹1, 簔輪 和志2, 杤尾 人司2, 岩崎 信広2, 浜田 一美2, 和田 将弥1, 三羽 えり子2, 鄭 浩柄1, 松本 知訓1

Kenji TAKASHIMA1, Yoshiki SUGINOSITA1, Kazusi MINOWA2, Hitosi TOTIO2, Nobuhiro IWASAKI2, Kazumi HAMADA2, Masaya WADA1, Eriko MIWA2, Hirosi TEI1, Tomonori MATUMOTO1

1神戸市立医療センター中央市民病院消化器内科, 2神戸市立医療センター中央市民病院臨床検査技術部

1Gastrointestinal medic, Kobe City Medical Central Hospital, 2Medical laboratory, Kobe City Medical Central Hospital

キーワード :

【症例】
38歳女性
【主訴】
無症状(肝腫瘍精査目的)
【既往歴】
子宮外妊娠(1998年,手術),卵巣嚢腫(2006年,手術)
【嗜好歴】
嗜好歴: 飲酒:ビール700ml/日×18年 喫煙:20本/日×18年
【現病歴】
2006年9月にB型慢性肝炎の急性増悪を認め当科紹介となった.2006年11月よりEntecavir内服を開始し,2007年3月よりHBV-DNAが持続的に陰性化していた.血液検査で肝胆道系酵素,腫瘍マーカーに異常所見はなかったが,2010年12月の腹部超音波検査でS6に0.6cm大の低エコー結節を認め,精査加療目的で入院となった.
【入院後経過】
肝腫瘍精査のため各種検査を行った.肝S6の腫瘍は,単純腹部MRI検査において,T1強調画像で低信号を,T2強調画像で等信号を示した.またGd-EOB-MRI検査では,動脈相で高信号を,門脈相・平衡相で低信号を,肝細胞相では低信号を示した.腹部血管造影検査でA6の末梢に腫瘍濃染を認めた.肝動脈造影CT(CTHA)では,結節状の濃染を,経動脈的門脈造影CT(CTAP)では欠損像を呈した.ソナゾイドで腹部造影エコーを施行した.early vascular phaseで腫瘍部はhypervascular tumorとして造影されたが,被膜形成がなく,境界が不明瞭な腫瘍として描出された.Micro flow imaging(MFI)を用いて観察した血管構築は,肝細胞癌においてはバスケットパターンが典型的であるが,本症例では,多中心的に粗な血管が腫瘍内にひろがっていった.CT, MRI,アンギオ等の画像検査では肝細胞癌の診断に合致する所見であったが,造影エコーにおけるearly vascular phaseとMFIの所見が肝細胞癌には非典型的であった.このため肝腫瘍生検が必要であると判断した.しかし患者本人が肝切除を希望したため,2011年1月に腹腔鏡下肝部分切除術を施行した.切除標本では肝辺縁に単発の境界明瞭な0.6cm大の白色小結節を認めた.病理所見において背景の肝臓はF1,A1であった.腫瘍は一見境界明瞭であるが,正常肝組織との間に線維性被膜を持たずに境界が不整で門脈に近接して存在していた.また細い腔を持つ小葉間胆管様の腺が不規則,密に増生し,それらの間には少量の膠原線維と慢性炎症細胞と細血管を認めた.病理所見より肝内胆管腺腫と診断した.現在外来で経過観察中であるが,再発は認めていない.
【考察】
医学中央雑誌1986年から2010年までの検索において,本邦の肝内胆管腺腫は本例を加えて35例と稀な腫瘍である.肝内胆管腺腫はCT,MRI等の画像検査で肝細胞癌との鑑別は困難であるが,造影超音波検査による腫瘍内血流の詳細な観察によって肝細胞癌と鑑別できる可能性がある.肝内胆管腺腫の腹部造影超音波検査に関する報告は少なく,今後症例の蓄積・検討が必要である.