Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

一度このページでloginされますと,Springerサイト
にて英文誌のFull textを閲覧することができます.

cover

2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
消化器:肝・症例1

(S405)

診断に苦慮した胆管細胞由来の肝腫瘍の一例

A case of cholangiocellular tumor mimicking cholangiocellular carcinoma

加藤 真里1, 田中 正俊2, 水島 靖子1, 下瀬 茂男2, 大野 美紀2, 内田 信治3, 隈部 力4, 中島 収5, 山口 倫1

Mari KATOU1, Masatoshi TANAKA2, Yasuko MIZUSHIMA1, Shigeo SHIMOSE2, Miki OHNO2, Shinji UCHIDA3, Tsutomu KUMABE4, Osamu NAKASHIMA5, Rin YAMAGUCHI1

1久留米大学医療センター臨床検査室, 2久留米大学医療センター消化器内科, 3久留米大学医療センター外科, 4久留米大学医学部放射線医学講座・病理学講座, 5久留米大学病院臨床検査部

1Department of Clinical Laboratory, Kurume University Medical Center, 2Department of Gastroenterology, Kurume University Medical Center, 3Department of Surgery, Kurume University Medical Center, 4Course of Radiology , Course of Pathology, Kurume University School of Medicine, 5Department of Clinical Laboratory, Kurume University Hospital

キーワード :

【症例】
67歳,男性.
【既往歴】
腹腔鏡下胃癌局所切除術 (62歳),大腸ポリープ,高血圧症 (65歳).
【現病歴】
2011年,残胃癌 (adenocarcinoma) 術前のCT検査にて,肝S5に約 20 mmの肝腫瘍を認め,精査となる.
【検査所見】
腹部超音波:B-modeで,肝S5に,胆嚢に接するように13×11 mmの境界明瞭,内部均一な高エコー腫瘤を認めた.造影超音波:動脈早期相で腫瘍全体が濃染.動脈後期相では,腫瘍内部で一部欠損開始.門脈相では,腫瘍内部が欠損,腫瘍辺縁は造影が持続し,後血管相では欠損像を示した.また,defect reperfusion imageでも濃染が確認された.CT:単純CTでは低吸収域を呈した.造影CTでは,内部が一部造影される低吸収域を呈した.なお,2006年のCTでは,同部位に占拠性病変は認められなかった.Dynamic-EOB-MRI:T1WIで低信号,STIR像で高信号を呈し,早期相で一部濃染され,後期相で造影減弱し,肝細胞相で欠損像として描出された.PET:悪性所見を示唆する集積は認められなかった.腫瘍マーカー: CEA : 1.5 CA19-9 : 7.4 CA72-4 : 3.0以下
【経過】
各種画像診断の結果,胃癌肝転移や胆管細胞癌などの鑑別診断が挙がり,悪性腫瘍の可能性は否定できなかった.良性・悪性の診断が確定しなかったが,患者の同意のもと,2011年7月,胃癌に対する胃全摘出術の際に,肝部分切除術が施行された.切除標本の病理像からは,胃癌からの転移は否定的で,その後の免疫組織化学染色等から,病理診断では,biliary adenofibromaの初期像の可能性が示唆された.病理診断に関しては確定診断ではなく,現在,継続して検討中であり,追って報告する.
【考察】
造影超音波検査のみからの推察では,後血管相で欠損像が得られたことから,良性腫瘍でなく,転移性肝腫瘍,胆管癌などの悪性腫瘍を鑑別疾患として挙げた.しかし,切除標本の病理像からは,胆管系腫瘍の,より良性に近い病変の可能性が示唆された.腫瘍部にソナゾイドを取り込む肝細胞(Kupffer細胞)ではなく,胆管系の組織が存在していたと考えると,造影超音波で欠損像が得られたことも整合性が得られる.
【結語】
今回我々は,画像検査での診断に苦慮し,摘出組織の病理像より,von Meyenburg complex由来の腫瘍と考えられているbiliary adenofibromaの初期像の可能性も示唆される稀少な肝腫瘍症例を経験した.造影超音波所見を中心に,各種画像検査と切除病理組織像を提示して報告する.