Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
血管:静脈関連

(S401)

大腿及び前腕に動静脈奇形を発症した1例

A case of arteriovenous malformation in the thigh and forearm

上田 美奈子1, 2

Minako UEDA1, 2

1大阪大学医学部付属病院医療技術部, 2大阪大学大学院放射線医学講座

1Department of Medical technology, Osaka University Hospital, 2Department of Diagnostic and Interventional Radiology, Osaka University Graduate School of Medicine

キーワード :

【はじめに】
動静脈奇形 (arteriovenouslformation:AVM)は毛細血管を介さない異常血管床による動静脈の吻合異常であり静脈高血圧の二次性変化を呈し,重症例では高心拍性の心不全をおこすこともある.当院ではAVM患者数は年々増加しており臨床診断や治療方針の決定には,無侵襲・反復可能な超音波検査の役割は重要である.今回我々は下肢AVMのIVR治療前から後遠隔期及び経過中に新たに発症した前腕のAVMについての病変部の超音波像とMRI,血管造影及び病理診断との比較を行ったので報告する.
【症例】
10歳代,女性.3歳児より左大腿後面に腫瘤を認めるも症状無く経過していたが,2007年1月に軽度の有痛性腫張が出現し,左大腿部のAVMと診断され同年7月に当院紹介となった.また,同AVMの治療経過中,2010年8月頃から右前腕AVMが新たに顕在化した.既往歴,家族歴に特記事項無し.
【画像所見(下肢)】
治療前;USは左大腿後面皮下に数珠状血管(瘤)を認め,左深大腿動脈(L-DFA)との交通を認めた.パルスドップラーでは瘤~L-DFA交通部~DFA本幹で動静脈混合波形を呈した.(瘤内パルスドプラ;Vp/ed(cm/s)/RI=62/34/0.38)それ以外の部位では波形はnormal patternであった.MRIでは左大腿部内面の皮下脂肪組織にT1.w.i.で低,t2.w.i.高信号の管状構造を,造影MR(MRA)にてL-DFAから供血されるナイダスと数珠上のdrainage veinを認めた.血管造影はL-DFA各枝末梢からのAVFと著明な皮下静脈瘤が描出された.IVRによる血管塞栓術の適応とされ,08年8月に一回目のIVRが施行された.治療2ヶ月後;US,MRA共に病変部に大部分の残存を認めた.2009年8月2回目の血管塞栓術施行.2回目治療後2009年12月;USでは約1/3程度が残存し,(瘤残存部;Vp/Ved(cms)/RI=40/20/0.49)他は血栓化していた.MRIは大腿部内側の異常血管の軽減を認めた.2009年12月3回目 血管塞栓術時の造影ではL-DFA末梢AVFは前回より減弱していた.皮下静脈瘤2箇所に対して塞栓術を行うとAVFは著明に減少し微小shuntが残存した.治療後2011年3月;USにて病変部の血栓化とシャント波形の大幅な減少を認めた.
【画像所見(上肢)】
2011年3月;USは右前腕伸側の筋層〜皮下にナイダスを,表在に約3.2*1.2cmのAVM波形を呈する瘤を認めた.MRIは右前腕尺側皮下に32*14*27mm大のT2強調画像で高信号と中間信号の混在,T1強調画像で筋肉と等信号の腫瘤を,MRAでは早期静脈潅流及び還流静脈の瘤化を認めた.血管造影では前腕皮下に尺骨動脈と骨間動脈をfeederとするAVMがみられナイダス後の静脈腔の瘤化と大半の上腕静脈への流出を認めた.同年9月に形成外科にて切除術が施行された.
【切除標本病理所見】
局所所見;単一のvenous carvity及び複数のfeeding arteryから成っている.病理所見;壁の厚い血管が多数集簇し一部に不規則な拡張.EVG染色は動脈・壁肥厚を伴う静脈・どちらとも言えない血管成分が混在していた,悪性所見無し,AVMと診断.
【考察】
下肢及び上肢のUSとMR・血管造影法を時系列上で比較すると病変部位・範囲・形態はいずれの時点でも一致,AVMと非病変部の鑑別はパルスドップラーが有効であった.また,上肢AVMでは病理所見とも一致していた.
【結語】
今回のように下肢,上肢など死角が少なく,病変部も比較的限局していた場合のUSは,他の画像及び病理診断と非常に整合性があり,精度の高い検査を行える可能性が高まった.