Online Journal
電子ジャーナル
IF値: 1.878(2021年)→1.8(2022年)

英文誌(2004-)

Journal of Medical Ultrasonics

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2012 - Vol.39

Vol.39 No.Supplement

一般口演
血管:静脈関連

(S400)

腸骨静脈の深部静脈血栓症に対するカラードプラ血管エコーの有用性と問題点

Validation of Vascular Echo Color-Doppler in the Evaluation for Deep Venous Thrombosis

村上 未希子1, 早川 裕里1, 浪崎 秀洋1, 富田 文子1, 西上 和宏2

Mikiko MURAKAMI1, Yuri HAYAKAWA1, Hidehiro NAMISAKI1, Ayako TOMITA1, Kazuhiro NISHIGAMI2

1済生会熊本病院中央検査部 心血管エコー検査室, 2済生会熊本病院集中治療室

1Cardiovascular Echo Laboratory, Saiseikai Kumamoto Hospital, 2Department of Critical Care and Cardiology, Saiseikai Kumamoto Hospital

キーワード :

【目的】
下肢の深部静脈血栓症(DVT)のエコー検査において,圧迫法が国際的な標準評価法となっている.しかし,カラードプラ(CD)の画質向上により,CD法による評価も多用されるようになった.特に腸骨静脈は圧迫法が困難であるため,CD法による評価が用いられているが,その有効性の検証は未だ十分ではない.一方,造影CTによる静脈造影も進歩し,DVT検索のgold standardである血管造影に替わり,一般化してきている1).そこで本研究では,腸骨静脈のDVTに関して,造影CTをもとにCD法の有効性を検証した.
【対象】
2009年10月〜2011年10月末までに,DVT評価のためにエコーを施行した3,286症例のうち,エコー検査の前後3日以内に造影CTを施行した121症例(242肢)を対象とした.
【方法】
エコー装置は,GE横河Vivid7,東芝Aplioを用い,プローブは3.5〜7MHz前後のコンベックスプローブ,7〜9MHzのリニアプローブを使用した.カラードプラは12cm/sec以下の低流速に設定した.CD法によるDVTの診断は,血流シグナルの欠損と断層図での血栓エコーをもとに判断した.造影CTでは,静脈相での造影欠損をもとにDVTの診断を行った.腸骨静脈のDVTに対する造影CTとCD法の比較検討を行った.
【結果】
描出不良のためにCD法での評価困難例は46肢,全体の19%であった.造影CTおよびCD法で腸骨静脈のDVT(+)と診断された症例は30症例36肢で,そのうち完全閉塞が18例,壁在血栓(不完全閉塞)が6例,棒状・索状血栓が12例だった.腸骨静脈のDVTに対するCD法の感度は92%,特異度は80%であった.観察可能例のみでの感度は100%,特異度99%であった.DVT(+)と診断された36肢のうち,CD法(+)・造影CT(+)は27肢,CD法(+)・造影CT(-)は5肢,CD法(-)・造影CT(+)は0肢であった.CD法(+)・造影CT(-)の5肢は,壁在血栓が3例,棒状・索状血栓が2例だった.両検査ともDVT(+)ではあるが,血栓の範囲を造影CTよりもCD法で過小評価したのは4肢であった.その内訳は,CD法での観察不良箇所に血栓を認めたものが2例,観察不良だが血流シグナル(-)で血栓を疑ったものが1例,CD法では血流シグナルを認めDVT(-)と判断したものが1例だった.CD法で血流シグナルが観察されDVT(-)と診断した1例は,限局性の壁在血栓だった.
【考察】
CD法での腸骨静脈DVTのエコー評価は,約20%の観察困難例がある.しかし,エコー描出可能例では,CD法はDVTを高い感度と特異度で診断することが出来た.一方,造影CTでは,エコーで観察された壁在血栓や索状血栓の5例を検出できなった.さらに,エコー検査では存在診断だけでなく,血栓の可動性などの性状評価も行うことができ,腸骨静脈のDVTの検査法としてCD法はきわめて有用であると考えられる.CD法や造影CTそれぞれの特性を活かしながら,DVTの診断や経過観察を行っていくことが重要である.
【文献】
1)Ghaye B, Dondelinger RF. Non-traumatic thoracic emergencies: CT venography in an integrated diagnostic strategy of acute pulmonary embolism and venous thrombosis. Eur Radiol 2002;12(8):1906-21